第27話『おりょうの加護』
翌朝、一番最初に目を覚ましたのはアグニでした。
「ふああ~・・・眠い。もう一眠りしようかしら」
アグニが独り言を言っていると、ピエタやペロッティ達も続々と目を覚まし始めました。
「おはようございます、アグニ様」
「おはよう、ペロッティ」
「う~~む・・・よく寝たわい。もう少しでパパイヤンに着くぞ。あとひと頑張りじゃ」
「は~い、ようし、今日もガンガン道中の怪物共に止めを刺していくわよ~」
アグニは両腕を天高く突き上げ、叫びました。
朝起きてコアラ姿に変身したペロッティは、早速朝食の準備に取り掛かります。
「それにしても、ゼントの奴、まだ戻ってきておらんのか?」
「そのうち戻ってくるでしょう。放っておきましょう」
ゼントを心配するピエタに、グラウスが辛らつな一言を浴びせました。
「うむ、あやつなら途中で戦闘不能になることもないじゃろう。よし、先に朝飯と行くかのう。アグニよ、リョウマを起こしてまいれ」
「はい」
アグニは立ち上がると、キャンプの中に入っていきました。
「あれ、リョウマ?」
室内はがらんどうで、リョウマの姿はありませんでした。カバンも見当たりません。
「大変っ」
アグニは直ぐにキャンプを飛び出して、この事実をピエタに伝えました。
「なんじゃと?? リョウマがいない?」
「カバンもありませんの」
「まさかあいつら、私達を騙して逃走したんじゃ・・・」
グラウスが、不穏な言葉を口にしました。
「馬鹿な事を言うな。あやつらは金に汚いが、約束を破るタイプには見えん」
「私もそう思います」
ピエタの意見に、食事を運んできたコアラ姿のペロッティが同調しました。
「じゃあ一体リョウマはどこに行ってしまいましたの? 」
「うむ・・・ちょっと待て、奇妙な気が辺りに混じっておる」
ピエタは特殊な魔法を周囲に発動し、人間が侵入した痕跡を黄金色に表示させました。
「何、どういうことですの?」
「ワシらが寝ている間に何者かが侵入したんじゃ。恐らくは賊じゃろう。このワシとしたことが、ぬかったわいっ」
「そんなっじゃあリョウマ君は?? 大変ですよ、彼女は戦闘能力が無い。賊に殺されてしまいますっ」
コアラの姿のペロッティは、周辺の匂いを嗅ぎ、地面にある足跡を見つけ出しました。
「ピエタ様、足跡です。それも複数ありますっ」
「ということは、まさか、リョウマ君は・・・」
「カバンごと賊に攫われたんじゃっ」
「まあ大変、早く助け出さないとっ」
「うむ、急ぐぞ。ペロッティ、お主はここで留守を守ってゼントの帰りを待っておれ。ワシとアグニ、グラウスの三人で行くっ」
「わかりましたわ、でもどうやって?」
ピエタは再び魔法を詠唱し、足跡を黄金色に光らせました。
「おお、これは・・・」
グラウスはピエタの魔法に驚きの表情を浮かべました。
「この足跡をたどっていくぞいっ」
「ようし、リョウマを助け出しましょうっ」
こうしてピエタとグラウス、そしてアグニの三人はペロッティを残し、全力で足跡を追跡していったのでした。
一方リョウマとカバンを運んでいた盗賊団は自らが洞穴の中に作ったアジトに到着すると、彼女をカバンごと奥の大部屋に連れて行きました。
「ひいい・・・・疲れた」
「馬鹿、そんなこと言ってる場合か、早くこのガキを起こせっ」
「こんな状態なのにまだ寝てるって、能天気な子供ですね」
「いいから早く起こせ」
構成員の一人が地下に設営された井戸から水を汲んでくると、眠っているリョウマにぶっかけました。
「ぷぎゃっ」
驚いたリョウマは跳ね起き、周囲を見渡します。
「なっなんじゃい、ここはどこぜよ?」
リョウマの視界に五人の悪人顔をした男達が入りました。
「おまんら、誰だ?」
「黙れ、お前リョウマだろ! 俺は知ってるんだぞ?! お前が俺たちの肝を持っていったんだな?」
「肝? ああ、べヒーモスのことか?」
「そうだ。返せ! あの肝は俺たちの物だ!」
「そうだ、返せ!」
「返せ、返せ!」
盗賊団たちはまだ地べたに据わっている状態のリョウマを十字に囲み、剣を抜きました。
「俺たちの連携必殺剣の餌食になりたくないなら、今すぐその肝を寄越しなっ」
団長のポンカツはそう言ってリョウマに得意の恫喝をしましたが、彼女は、
「嫌ぜよ。おまんらには死んでもくれてやらん」
とあっさりと言い切り、ペロリと舌を出したのです。
「だっ団長。こいつ、痛い目に遭いたいようですぜっ」
「そうだな。斬ってやる。斬られると、痛いぞ~。血が吹き出て、いっぱい泣いちゃうぞ~~」
「うるさい奴らだなぁ。やれるもんなら、やってみんかい」
と、リョウマは怯えるどころか逆に盗賊たちを挑発したのです。
「なんだと!? ほっほんとに斬るぞ?? いいのか? おい!!」
「かまわん。やってみれ、ほれ、ほれ」
リョウマは団長のポンカツを指で煽ります。
実はこの盗賊団、剣を持っていながら人を殺したことも、切った経験すらもありませんでした。
「こっこの野郎。かっかかれ~~~~~!!!」
「つっついにやるんですね、団長」
「ああやるぞ、切ってやる。切ってやるぞ」
団長は構成員達に決死の号令をかけ、一同はリョウマ目掛けて切り掛かっていきました。
そのときでした。リョウマは自らの特殊能力、おりょうの加護を発動したのです。
「おりょうの加護っ」
おりょうの加護は一定期間、どんな攻撃や魔法も弾き返すという、とても強力な能力です。
当然のことながら、無敵状態になったリョウマに切り掛かった最初の構成員の剣はポキリと折れてしまいました。
「なっなんだと~~~~っ」
「ひいい」
「このガキっどうなってやがるっ」
「おまんらにウチは殺せんぜよ~」
リョウマは余裕のある笑みを浮かべました。
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