第26話『べヒーモスの肝強奪作戦!』

 


 ミネルバ州の領地をモンスターを倒しながら進んでいるアグニ一行は、日も暮れたため、その日も野営地を張って食事をしてから眠ることになりました。


 いつものようにペロッティの作った絶品料理に一同は舌鼓をうった後、

 アグニとグラウスは魔法の修行に明け暮れています。


 ピエタはコアラ姿のままのペロッティに声をかけました。


「どうしたペロッティ。人間の姿に戻らんのか?」

「いえ、べヒーモス戦で自らの非力さを痛感してしまいまして。この姿を維持していれば変身時間を伸ばせるのでは? と考えております」

「何を言っておる。お主はよくやってくれたわい」

「ですが今の私の力では、その内戦闘で皆さんの足を引っ張ることになってしまいます」

「ここだけの話、お主よりもグラウスの方が使えなかったぜよ~。首を狙った渾身の風魔法もあっさりと避けられよったきに」

「あれは俊敏なべヒーモスなら当然避けて然るべき速度でしたから・・・それにべヒーモスを倒したのもグラウス殿です」

「ふむう・・・確かに常にコアラの姿でいれば、戦闘中の変身時間も伸びていくかもしれんのう。地道に試してみればよい」

「ありがとうございます、ピエタ様」

 

 コアラ姿のペロッティは丁重に挨拶をしました。


 一方、ゼントは一人、徐に野営地を離れようとしました。


「おいゼント、どこ行く気ぜよ?」

「夜通しモンスターを狩って、高そうな素材を集めてくる。パパイヤンに着いたら売買してくれ」

「わかった、気をつけるんだぞ」

「ああ」


 こうしてゼントは夜陰に紛れていきました。


「今日はもう遅い。そろそろ休むとしようかのう」

「そうですね、それがいいでしょう」

「うは~~もうめっちゃ眠いぜよ。」


 と、その時でした。リョウマの周囲を足長蜘蛛が徘徊していたのです。

 それを見たリョウマは酷く怯え、泣き叫び、騒ぎ始めたのでした。


「あら、美味しそう」


 グラウスとの特訓を終えたアグニは、蜘蛛を掴むとペロリと平らげてしまいました。


「ひょええええええ悪魔だああっ」

「あら、あなた? こんな蜘蛛が怖いの? 意外といける味よ」


「アホぬかせっウチはキャンプの中で眠らせてもらうぞっ」


 そう言って、リョウマは野営地のキャンプの中にカバンを背負って入っていきました。


「ワシらは外で寝るとするかのう。」

「私は起きて見張っておきましょうか?」

「いいや、お主も疲れたじゃろう。レイピアも無いし、体を休めておくがよい」

「かしこまりました」


 ピエタとペロッティが就寝するということで、アグニ達も、眠りに付くことにしました。


 そして深夜、アグニ達に追いついたポンカツ旅団の面々が野営地にやってきました。


「おい、あそこでのん気に寝てる奴らじゃないのか?」

「馬車があります。間違いありませんぜ、団長」

「肝らしき物が無いな・・・」

「きっとあのテントの中ですよっ」


 構成員の一人がリョウマの眠っているテントを指差しました。


「よし、お前ら、気配を消せ! 足音を立てるなよっ」


 5人は気配を消し、眠っている一同をすり抜け、野営地のキャンプ内に侵入しました。 

 

 そこにはすやすやと眠るリョウマの姿と、カバンが置いてありました。


「団長! このガキ、リョウマですよ!」

「何、あの豪商人で有名なリョウマ・サイタニか??」

「ええ、噂によるとリョウマは変名で、国を追われて懸賞金が賭けられてるとか、何でも入るカバンを持っているとかっ」

「じゃあ肝はきっとこのカバンの中だな。よし、開けろっ」


 構成員達は力を合わせてカバンを開けようとしましたが、全く開きませんでした。


「ダメです。開けられません」

「くっそ、ようし。こうなったらこのリョウマごとアジトに連れて行くぞ。お前ら、リョウマとカバンを運べっ」


 団長のポンカツはリョウマのカバンを背負い、眠っている彼女の両脇を腕で掴みました。

 そして一同は五人がかりでリョウマとカバンを野営地から自らのアジトへ運ぶことにしたのです。


「えっさほいさ、えっさほいさ」


 アグニ達は旅の疲れから熟睡していたことと、彼らが気配を完全に消していたため、その異変に気づくことが出来ませんでした。

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