第13話プロローグ:変わらないもの

「なるほど、よくわかりました。感謝いたします、ピエタ殿」


 グラウスは丁寧な所作で賢者に謝辞を述べました。


「うむ。ところでおぬし達、これからどうするつもりじゃ」


「一度モントーヤ殿の下に戻り、了承を得たらアグニを日ノ本まで連れていくつもりです」


「お主一人でか?」


「はい」


「それは危険すぎる。道中は一筋縄では行かないぞ。」


「承知の上です」


 勇ましい声でそう言い放つグラウスに感銘を受けたピエタは驚くべきことを口にしました。


「ならばワシも連れて行け」


「なんですって。ピエタ殿、それはいくらなんでも」


「なあに、ワシもこの生活に飽き飽きしていたところじゃ。


それに旅の道中でレベルアップの方法も明らかになるかもしれんしのう」




 快活にそう語るピエタに、グラウスは躊躇いつつも今一度本心を確かめることにしました。




「本当によろしいのですか?」


「かまわぬ。我が従者、ペロッティも一緒じゃ」


 アグニがオラッオラッと野太い叫びを上げながらコアラ姿の青年の背中を足蹴りし続けています。


 彼の名前はペロッティ。森の賢者ピエタの従者であり剣も使える魔道具使いでした。


「アグニ、ペロッティ殿を蹴るのを止めろ」


「だってこの獣人、獣臭いんですものっこれが蹴らずにいられますかっ」


「ふむ、アグニはこのままレベルアップさせると人格に多大な悪影響を及ぼしそうじゃのう。ワシらにとっても深刻な事態になりかねん」




 そう呟いたピエタはアグニの後ろに立ち、彼女に呪文をかけました。




「あら、私ったら、一体何をしているのかしら。まあコアラさん、大丈夫。酷い事をする人間がいるのね」




 そのアグニの変貌ぶりに驚いたグラウスは、


「一体どういうことですか」


「人格変性の魔法をかけた。これで暫くは性格も落ち着くじゃろう。じゃがレベルが上がっていけば、この魔法も利き辛くなってくる」


「なるほど、そういうことですか」


 グラウスは納得したように頷きました。


「ではグラウスよ、これからよろしく頼むぞ」


「はい、こちらこそ」


 アグニに苛められていたペロッティは立ち上がると、人間の姿に戻ってグラウスに挨拶しました。


「あ~ん、子種をくださいませ~」


「そこは変わらないんだな・・・」


 グラウスはペロッティに求愛するアグニを見て嘆息したのでした。


 こうして、ピエタとペロッティが二人の旅に同行することになりました。


そして一同は眠りの森を抜け出して、モントーヤ邸に向かうことにしたのです。


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