第12話プロローグ:日ノ本
「我が名はピエタ・マリエッティ。偉大なるジャスタール一の賢者であるぞ」
どう見ても幼女にしか見えないピエタはアグニとグラウスを前に堂々と自己紹介をしてきました。
「初めまして、ピエタ殿。私は旅のエクソシストを生業としております、グラウス・アルテナと申します」
「私はアグニ・シャマナ。このモントーヤ地方を治める領主の娘よ」
丁寧に自己紹介をしてきたピエタに答えるように二人も挨拶をしました。
「ふむ。で、そなた達、何用でここに来たのだ?」
ピエタの問いにグラウスは即答しました。
「目的は二つあります。一つはアグニの体内にいる者の正体を突き止めること、
もう一つは、レベルアップの方法を教えてもらうことです」
「なるほど、それは難儀じゃのう」
ピエタはアグニをじっと見つめました。
「残念ながら、レベルアップの方法は私にも解らん。だがアグニが先ほどの戦いでレベルアップしていることを鑑みるに、神の力が何かしら関係があるのだろう」
「レベルアップですって!?」
アグニのレベルは先ほどの戦いの経験で7から10にレベルアップしていました。
「神の力・・・一体どういうことですか?」
「ふむ・・・レベルアップの方法は解らぬが、アグニの体内に巣食っておる者の正体は分かる。」
「一体何がいるっていうの?」
「アグニよ、お主の体内にはタタラカガミという名の神が巣食っておる」
「たっタタラカガミだって?!」
グラウスは驚きの声を上げました。それはこの世界の創造に関わったとされる高尚な神の一人の名前だったからです。
「今から少し昔、理由は分からぬが、タタラカガミは天界で主神二ニギノノミコトに謀反を起こし、敗れたと聞いておる。そして下界へ逃げ込んだタタラカガミはとある女性の胎内にいる胎児に取り付き、復活の機会を窺っているらしいのじゃ」
「そ・・・・その胎児が私ってこと?」
「そうじゃ。もうそう遠くない未来、タタラカガミはお主の体を食いやぶって現世に顕現するであろう。そのときお主は死ぬことになる」
衝撃の告白を受けたアグニは、思わずその場に膝をついてしまいました。
「そんな、酷いわ、あんまりよ。清廉潔白に、清く正しく美しく生きてきたのに」
「精霊潔白な女性は汚い言葉など使わんものだが」
傷つき床に突っ伏すアグニに、グラウスは追い討ちをかけるように厳しい言葉を投げかけました。
「うるさいわね、グラウス。あなたは黙ってて頂戴!」
「はいはい。それでピエタ様。何かアグニを救う方法はないのですか」
グラウスの問いかけに、ピエタは顎に手を置いてしばし思考した後、こう言いました。
「方法は二つある。一つはアグニのレベルを上げること。そうすることで人格に悪影響が出る恐れがあるが、体が強靭になることでタタラカガミの復活を遅らせることが可能になる。そしてもう一つは、タタラカガミを信仰している国へ向かうことじゃ。」
「タタラカガミを信仰している国? それはどこにあるんですの」
アグニは必死の表情を見せてピエタにすがりつきました。
「遠く遥か東。幾つもの山と国境と海を越えた先に日ノ本という国がある。
そこに行けば何か手がかりがつかめるやもしれん」
日ノ本。
そこはアグニの住む国からは遠く離れた場所にある謎の多い国です。
これまで何人もの冒険者が日ノ本へと向かいましたが、生きて帰ってきたものはおりませんでした。
「日ノ本か・・・そいつは遠く、危険に満ちた旅になりそうだな」
グラウスは肩を降ろして大きく息を吐きました。
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