第9話プロローグ:森の怪物
眠りの森は人を催眠作用に導く特殊な粉が舞う場所でした。その為、グラウスたちは口元にガーゼの布を巻き、森の中を進んでいきました。道中に出てくる魔物は護衛の兵士達が次々と片付けてくれました。
「はは、他愛もない」
「我らモントーヤ兵に敵う者無し」
血気盛んにそう語る二人の兵士に、グラウスは釘を刺しました。
「あまり調子にのるな。この森にはもっとヤバイ魔物がいる香がする。」
「はは、どうせ大したことありませんよ」
「考えすぎですって」
一方でアグニは道中で咲いていた毒々しい花を摘んでいました。周りの人から見たらけったいな物でも、彼女には美しく見えたのです。その可笑しな美的感覚に、グラウスは首を捻りました。
森を順調に進んでいくと最深部と思われる空間に辿り着きました。そこには巨木が生えていて、幹には木製のドアも付いています。
「着いたぞ、賢者の住み家だ」
「ようやく着いたのね」
アグニが言ったそのときでした。
突然空から赤い皮膚に下半身は毛で覆われた角の生えた巨大な怪物が降ってきたのです。口からは獰猛そうな涎を垂らし、舌を出してグラウス達を見つめています。それを見た二人の兵士は勇敢に立ち向かうかと思いきや、
「ひいい、私の命は世界の誰よりも重いのです~~~~」
「アグニ様、ご武運を~~~~~」
なんとそう言い残して退散していってしまいました。
「あっこら、待て」
「なんて役立たずなの。クビよ、クビ! クビックビックビッ」
こうしてグラウスとアグニは怪物と対峙することになりました。
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