第8話プロローグ:眠りの森へ

シャマナ家にやってきたグラウスは、その晩、来賓室にてモントーヤに丁重にもてなされました。美女達の踊りを見て、高級な食材で作られた料理の数々にグラウスは舌鼓を打ちました。




「してグラウス殿。本当に眠りの森へアグニを連れて行くおつもりですか」


 モントーヤは不安そうにグラウスの顔を窺います。


「ええ、それが現状出来る最善の策です」


「ですがあそこは怪物が多数存在する危険な森です。二人だけで行くには危険すぎます」


「リスクは承知の上です」


「どうでしょう、グラウス殿。我が家の選りすぐりの兵隊を二人お供させたいのですが」


「中途半端な戦力は危険を増やすだけです」


「いいえ、我が家の兵隊は皆腕自慢の猛者ばかりです。きっとグラウス様のお手を煩わせることはないでしょう」


「モントーヤ殿がそこまで言うのなら受け入れましょう」


 グラウスの言葉に、モントーヤは深々と頭を下げました。




 一方自室に篭っていたアグニはベッドに横たわり、グラウスに言われたことを思い返していました。


「身の破滅か・・・」


 あまりにも強烈なその言葉は、思春期の乙女の心を大いに惑わせたのです。


 もし自分の中に自分じゃない何者かが潜んでいるのなら、取り除きたい。この体は私の物だ。侵略者には渡さない。


 アグニは強い決意を持って眠りの森へ行くことを前向きに考えました。




 翌朝、モントーヤは馬車の手配をし、邸宅の庭園内でグラウスとアグニ、それにお供の兵士二名を乗り込ませました。


「ではグラウス様、くれぐれも頼みましたよ」


「了解しました。お嬢様は私に任せてください」


 グラウスはそう言うと、アグニの方を向き、


「ここから先は敬語は抜きだ。覚悟はいいか、アグニ」


「私なら大丈夫よ、グラウス。」




 こうしてアグニ一行を乗せた馬車は眠りの森へ向かったのでした。


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