第4話プロローグ:素性
古くからの名門魔術師の家に育てられたグラウス・アルテナは放蕩の旅に出る前、大陸一魔法が栄える国、ブリジン王国の特務魔術師として十代の時からその任に就いていました。
ところが魔族の大群の王都襲撃に遭い、王国は崩壊。ブリジンは魔族が支配する国へと変貌を遂げました。王国を襲った魔族の長、ザンズカールは自らの保身のために国の有力な魔術師達を次々と死刑にしていきました。
父であり、師匠でもあったグラウスの親も処刑されてしまいました。その処刑の様子をまじかで見たグラウスは、ザンズカールへの復讐と更なる力を求めて魔族の追っ手を振りきりながら王国を脱出。素性を隠してエクソシストに転身し、悪霊との問題に困っている人々を助けながら僅かな路銀と酒を糧に放蕩の旅を続けていたのです。
そんな彼は今、ガレリア王国の中でも中流階級の人々が泊まる安く煤けた作りの宿の二階の部屋に滞在していました。グラウスは蝋燭の明かりをお供にこれまでの旅の記録を手帳につける作業をしておりました。
黒い外套にシルクハット姿のモントーヤの使者は宿屋の主人に連れられ、グラウスの滞在する部屋の前までやってきたのでした。
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