第六場〔最終ステージ〕ラスト

 最終ステージは、演出・照明・音響・特殊効果(スモーク)・演者のスタッフ総力です



 舞台に一人残ったアラマンダ。

 カオルが立っていた、舞台のそで側から、灰色魔導士カルマの格好をした、教師狩間が現れる。

カルマ「おやっ、久しぶりですね……大魔王アラマンダ、我が旧友」


 アラマンダ、セリフを喋りながらルイが立っていた位置に移動する。


アラマンダ「──同じ師匠の元で、魔導修業に励んでいたあの頃が懐かしい」

カルマ「わたしは人間、あなたは魔物、互いの種族の幸せを願い修業を続けた……少なくとも、わたしたちの間に種族の心の隔たりは無かった」

アラマンダ「それが、わたしは魔王軍を指揮する大魔王に、カルマは勇者パーティー側の魔導軍師……人生はわからないものだ」


 二人が会話をしている間に明転のまま、部室セットが白い布で被われ。

 魔王軍兵士の衣裳を身につけたE・F・G・Hは、勇ましい動きで無言演技をしながら。

 見習いの白い魔導士の格好をしたA・B・C・Dは、優雅に踊るように。

 セットを最終シーンの魔王城塞に変えていく。


アラマンダ「やはり、騎士団長に愛の呪いをかけたのは、灰色魔導士カルマのあなた……同じ師匠で学んだ身、薄々気づいていた」

カルマ「わたしも気づいていました、戦士長に一目見た瞬間に恋に陥る、禁断の心の呪いをかけたのが、あなただと」

アラマンダ「どちらも、騎士団長と戦士長が望んだコト、二つの呪いが重なり解除不可能な呪いになってしまった……これが悲劇と苦しみのはじまり」


 明転の場面変換が終了した時点で、A・B・C・D・E・F・G・Hの八人、静かに舞台からそでへ去っていく。


 少しだけ銀色の紙片〔雪と火の粉〕が舞台に舞う。

アラマンダ「愛の罪人たちが、自分たちなりの答えを見つけ出すのを……我々は見届けるコトしかできない」

カルマ「正しい答えや結果は、呪術の偽りから生まれた愛には無いのかも知れない」


 カルマ、少し周囲を見回す。

カルマ「次の準備も整ったようですね……それでは後ほど」

アラマンダ「あぁ、後ほど」

 アラマンダ、足早に引っ込む。

カルマ「最終シーンが幕を開ける」

 カルマも舞台から、そでに去る。

 ──暗転


 最終シーン・炎上する

魔王城塞。

 SE・ぶつかり合う金属音、戦いの声。


 対峙したまま動かない、戦士長カオルと騎士団長ルイ。

 舞台を左右に往復して駆け抜ける、魔王軍兵士E・F・G・Hと勇者パーティー1・2・3・4。


 魔王軍兵士が劣勢で、勇者パーティーに追われていたり。

 魔王軍兵士が優勢で、勇者パーティーを追っていたりのシーンが少し続く。


魔王軍兵士「ルイさまぁ!ルイさまぁ!」

勇者パーティー「カオルどの!カオルどの!」


 炎の中で対峙しているカオルとルイ、少しづつ構えを変えていく。

 そしてカオル、ルイを刺し貫こうと構えていた剣を落とす。

 ルイも短剣を持った手をダラリと下げ、短剣を舞台に落とす。


カオル「できない……愛してしまった者を殺すなんて、できない」

ルイ「最初は偽りの愛だった……それが、いつの間にか本当に愛し合っていた」

 舞台の左右に現れる、カルマとアラマンダ。


カルマ「それが、あなたたちの出した答えのひとつ……結果のひとつ」

アラマンダ「すべてが、二人が望んだ結果──呪術で愛することを、望んだ悲劇と苦悩」


 カオル、カルマの方を見る。

カオル「狩間先生……ですよね?わたしたち、いったい何をやっているんですか?これ、芝居ですよね?演劇をやらされているんですよね?……灰色魔導士カルマさま、答えてください?」


 ルイ、アラマンダの方を見る。

ルイ「荒田部長、教えてください……これなんなんですか?わからなくなってきました……大魔王アラマンダさま、わたしはどうすれば?」


カルマ「芝居ですよ、最後まで続けなさい……そして見つけなさい」

アラマンダ「永遠に解けるコトが無い愛の呪い……囚われた者たちの手で、新たな結末を信じて演じればいい」


 出演者全員が舞台に登場、各位置にグループごと分かれて並び立つ。


見習い白い魔導士A「神が人と魔物に与えた愛する気持ちを……」

見習い白い魔導士B「利用して敵を倒そうした者への……これは大いなる罪」

見習い白い魔導士C「許しを請うても……神は許さない」

見習い白い魔導士D「見つけよう、見つけよう、愛の罪人たちが自ら出した答えを見つけよう」


魔王軍兵士E・F「勇者たちに死を!」

魔王軍兵士G・H「我らの深い恨みを!」


勇士パーティー1・2

「魔物に死を!」

勇士パーティー3・4

「殺された者たちの恨みを!」


魔王軍兵士E・F

魔王軍兵士G・H

勇士パーティー1・2

勇士パーティー3・4

「敵に大いなる死を!」


 苦悩するカオルとルイ。

カオル・ルイ絶叫。

「うわぁぁぁぁ!」

 剣と短剣を拾い上げ構える、カオルとルイ。


カルマ「さあ、どうしますか……この先は台本に書かれていなかった、結末です」

アラマンダ「我々は二人が選んだ結末を受け入れよう」


白い魔導士「永遠に続く、愛する罪人の答えの一つとして受け入れよう」


カオルとルイを除く全員

「答えの一つとして」


 カオルとルイ……再び剣と短剣を落とすと、しゃがんで抱擁する。

 舞台全体が、勇者側を示す〔赤〕と魔物側を示す〔青〕の混合した色──紫色に染まる。

 ライトの光線が舞台に、二人を中心にして放射状に走る。


カオル「カオルはルイを愛している」

ルイ「ルイはカオルを愛している」


 紫色に染まる舞台、日が暮れるように徐々に暗くなっていく。

 スモーク〔二酸化炭素〕が舞台に霧のように漂う。

 同時にSE・エンディング曲


 音量・Fi〔フェードイン・音が徐々に大きくなる〕からの

 音量FO〔フェードアウト・音が徐々に小さくなる〕そして

 音響、CO〔カットアウト、唐突に音が消える〕

 暗くなっていた舞台、明るくなり──終演となる。


『愛する罪びとたちの輪舞曲〔ロンド〕』戯曲もどき~おわり~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『愛する罪びとたちの輪舞曲〔ロンド〕』戯曲もどき 楠本恵士 @67853-_-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ