6-7 白い翼の女神


 風が吹いた。

 光が消えた。

 妄念も消えていた。


「――これで、大丈夫かな」


 クレーターの中からだと建物に阻害されてここまで広域の浄化は出来なかった。

 遮蔽物が無い状況――一番高い場所なら、ここしかない。


「ははっ、案外運動神経もあるのかも」


 でもまあ、下を見るのは怖くて出来ない。落ちそうだし。

 さっきは必死だったから大丈夫だったけど、僕、ちゃんと戻れるかな。


「エイキチ―!」


 一歩踏み出すのを躊躇っていたら、下から声が聞こえる。

 白い羽が舞った。

 女神様だ。翼を広げて、ここまで飛んできてくれたんだ。


「やったのだわ! 女神が認めた男がやってのだわ!!」

「やめて、飛びつかないで、落ちるから!」


 あ、足元のバランスを崩す。落ちるって。


「あ、あああーー」


 情けない声が出た。

 足元に感触がない。なんか、落ちてるみたい。


「わわわ、女神にしっかりとつかまってるのだわよ!」


 白い羽が羽ばたくと、重力を無視して僕たちは空に浮かぶ。

 抱きかかえられるように、僕は空の上に居る。


「ゆっくり降りるのだわ」


 ゆったりと、降りていく。

 その先に待っているのは、役目を終えた巫女。

 遠くから汽笛の音が聞こえる。

 今までのような勇ましい音じゃない。少しだけ、寂しい音がした。

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