6-2 終着駅
電車は停まった。それが意味するところを、僕たちは分かっている。
ここから先は僕たちが決着を付けるために歩いていくんだ。
だけど、その前にやることがある。
「掃除だ」
「うんっ」
◆◆◆
旅の間、時々気が付いたたら車内を掃除するくらいはしてきた。それも、これで最期であろう。だから、いつもよりも丁寧に磨いた。
二人で分担を確認する。
社内の清掃はマリに任せた。あの子の事だからちゃんとやってくれるだろう。
僕は、外から黒い車体を洗っている。
埃だらけの車体を、水を使って丁寧に洗っていく。よくよく見てみると、この車体は傷だらけだ。僕が再生した時よりも増えている。
「長い旅だったからなあ」
計測用の時計は何度も十二時を刻んでいる。歩いていたら、どれほどの時間がかかっていたのかも分からない。それどころか、僕たちはどこに行けばいいのかすら分からなかったと思う。
「君に出会えたことは、本当に幸運だった」
箒をもったマリが車窓からひょっこり顔を出してきた。
◆◆◆
ちょうど車体を磨き終わったころ、箒をもったマリが車窓からひょっこり顔を出してきた。
「エイキチ、終わったよー!」
「うん。わかった。こっちもこれで終わりだ」
最後に、水を思いっきりかける。
「ここまで、ありがとうございます」
僕の声に応えるように、汽笛が勇ましく鳴り響いた。
何を言っているか、分かる。
幸運を、そう言っている。
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