5-3 枯木の荒野


 電車を降りると、そこは枯れ木が立ち並ぶ荒野だった。おそらくは密度の高い森林だったのだろう、木々の間隔は数メートル程で、幹も10メートル以上ある。


 空は相変わらず黄昏で、生命の気配はない。

 周辺を見渡してみる。駅は無くて、おそらくは駅と駅の間だろう。


「何かわかりそう?」

「んー……どうだろう」


 とりあえず、残留思念の気配を探ってみる。


 うん。案の定、周辺には濃い気配が残っている。

 そうなると、この地に残る思念を祓えと言っているのかもしれない。


 とりあえず、気配の濃さそうな場所まで歩いてみよう。


「さて、マリは――」


 とりあえず電車を降りてもらったけど、この先はどうしよう。


「エイキチ、アタシも一緒に行くよ」

「そうだね……」


 さて、一人行ってもいい。身軽だし、もしかしたら何か危険な物が残っているかもしれない。でも、逆に危険があるとしたら、彼女を一人だけにするのも不味いんじゃないか。自分たちが居ない状況で汽車が襲われたら手の打ちようがない。なら、僕や女神様の手が届く範囲に置いておいた方がいい。


「わかった、一緒に行こう」

「うんっ!」


 パッと笑顔が咲く。

 僕は、手を強く握りしめ、気を引き締める。

 うん。この子に危害が及ばないように気を付けないようにしないと。


◆◆◆


 行けども行けども荒野、と言うのは今までと同じであるが、やはりこの土地には木が多い。

 枯れ木とはいえ、視界の妨げになる。やっぱり、二人で来てよかったかもしれない。


「マリ、悪いけど何か変なものがあったら教えてくれない?」

「うんっ!」

「ありがとう」


 マリは元気に返事をする。

空からは不機嫌そうな声が聞こえてくる。


『ズルいなー、女神も一緒に探索したら素直に褒めてもらえるのかしら~』

「僕、普段からそんな邪険にしてますか?」


 そんな不満そうに言わなくでもいいじゃないですか。


『女神だって女の子なんです~』


 うーん、僕もちょっと応対には気を付けよう。自分では敬意を持っているつもりでも、相手が不快感を持っていたのなら意味はない。こういうのも変な話だが、僕は女神様のような人とは積極的に仲良くしたいと思っている。


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