5-2 油断


 金属がこすれる音がした。前触れもなく景色が止まった。理由を考える間もなく、視界がひっくり返った。


「のわぁ!?」


 いきなり前方にかかる力。有無を言わさず放り出されてしまう。

 くつろいでいた僕たちは座席から投げ出される。シートベルトはやっぱり大事だ。


「うぅ……エイキチ、何が起きたか分かる?」

「いや、まったく」


 マリに手を貸して起き上がらせる。幸い、外傷は見当たらない。

 それにしても、情けないくらいに完璧に油断をしていた。

 そりゃあそうだ、自分たちで動かしている訳じゃないんだから、急に止まることだってある。それにしたって急ブレーキにも程があるけれど。


 お互いの無事を確認すると火室を確認する。

鉱石は残っている。紫色の光は消えていないから、たぶん動力に問題があったとも思えない。


「これ、燃料が切れたってわけじゃないよね」


 ご丁寧に汽笛が鳴った。肯定だろう。

じゃあ、間違いないな。


「ここで降りろって言ってるのかな」

「うん、アタシもそうだと思う」


 意見は一致した。客車のように、何か必要なものがあるかもしれない。

 とりあえあず、僕たちは周辺を探索してみることをした。


『なーにー、さわがしいのだわ』


 ようやく、女神の呑気な声が聞こえた。

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