4-2 地下通路
時々思う。
この女神様は真面目で感覚も人間に近い。とてもいい女神だ。
女神と言うのは上位存在であり、僕たち人間も世界に付属する余計なモノとして扱い人間もいる。だから、女神様のように泣いてリ笑ったりして人間に寄り添ってくれるのは、僕たちの視点ではとても好感が持てる。
だけど、うるさい。
『あぁぁぁぁっ、もう飽きたのだわ!!』
女神様の素っ頓狂な叫びが響き渡る。
目の前に続く、真っ暗なトンネルに反響して、何度も『だわ だわ だわ』と跳ね返ってくる。
とてもうるさい。めっちゃうるさい。
「黙っててくださいよ」
極力抑えたつもりだけど、苛立ちが声に乗ってしまった。
不味いな、僕も大分焦ってきている。
『だって、さっきから同じような道を歩いてばっかりじゃないのよ』
「地図もないんですから、仕方ないですよ」
暗闇に声が飲み込まれていく。
僕が今立っているのは、古びた道。駅の中から繋がっている地下道のような場所だ。
どうにも、この場所は多くの人が集まる交通の要衝だったらしい。
最初は良かったのだろうが、方々に線路を伸ばしていく過程で駅自体にも増築工事が随時入ってきたようだ。
壁を見ても、数歩歩けば色が変わっている。短い間に工事があった証だ。
まあ、それはいい――だけど、無計画に工事を続けた結果、まるで迷路のような建物が生まれてしまった。
灯りがあればまだマシなんだろうけど、人が死んだ廃墟にそんなものは無い。手持ちの電灯だけが頼りである。
土地勘も手掛かりもない人間が迷路に入る――その結果、迷った。
「はあ……まず外から調査するべきだったかな」
気落ちすると足取りも重くなってくる。もう、注意をしながら歩かないで適当に外に――あれ、なんか踏んだ。固い。
「って、うあ?」
視点が急に崩れる。
漫画みたいな派手な音を立てて転がる。いたた。足元からバランスを崩して、尻もちをついてしまった。
カラカラ、と何かが転がった。これに引っかかったのかな。
あ、でもこれは。
『ちょ、ちょっと、大丈夫なのだわ? 怪我はない? 今すぐ送還する? 治療術式の準備はバッチリなのだわ』
「ははは、そこまで慌てなくて大丈夫です」「
立ち上がって埃をはらう。痛みもない。
「それに、いい発見もありました」
先ほど、僕を転がした何かを手に取る。
硬さに見合わない軽さ。それに、乾いているようでどこか生生しさを感じる感触。
「骨ですね」
骨。それも、人の骨があった。
『何か、光ってない?』
「ええ。それに、これくらい濃いのなら――」
意識を集中して異能の力を呼び出す。
これくらい濃いのなら、呼び出すのに苦労はない。
「
光が骨を中心に広がる。意思を持ったように僕の手を飛び出すと、自然と形を作っていく。
前は光の粒子だった。けれど、今度は違う。
光は収束し、人の形になっていく。
成功だ、これならきっと、『お話し』が出来る。
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