4章 積み上げた道、続く先は『神』の懐
4-1 鉄の記憶
そこに在ったのは、鉄の記憶。
彼らが得たのは大地を走り回る形。人が造った鉄の路を駆け、大陸中を走り回る。
「
朽ちた屑鉄が形を取り戻していく。
光に包まれた黒鉄は溶けるように変形していく。かつての記憶を頼りに。
出来上がったのは蒸気機関車……だと思う。蒸気が動力かまでは分からなかった。
『どう、動きそうなのだわ?』
女神様は興味深々と言った感じだ。顔は見れないけど、こちらの様子をしげしげと眺めているに違いない。
かくいう自分も、ちょっとウキウキしている。蒸気機関車なんて観光地でもなければ見られない。煙を上げながら大地を走り、雄たけびのような汽笛を鳴らす。映像の中の風景だけど、その姿が力強くてカッコイイ。
◆◆◆
ここ数日、歩き続けた。
線路を歩くうちに、変化は生まれた。
単線だった線路は合流しはじめ、やがて大き目の駅に辿り着く。
辺境の町は単線であったが、この駅には複数の路線が合流していた。
死んだ世界と言うのは変化に乏しい。少しでも景色が変わると言うのは、想像以上に刺激があった。
なにより、今まで以上に強い残された意思の気配があった。
気配を頼りに探索をする。古びた駅舎の中には、壊れた機関車が残っていた。もちろん動かないけど、何か『声』が聞こえたような気がした。
で、試しに形だけは取りさせてみたのだが――
「ダメそうですね」
形だけは取り戻した鉄の塊を触る。熱は無くて、金属の冷たさが伝わってくる。
だけど、それ以上の反応はない。うっすらと記憶は読み込めたのだが、それで終わりだ。
中もちょっと調べてみた。特におかしそうなものは無くて、石炭の代わりによく分からない鉱石はあるくらいだ。
『動かせたら移動が楽なのにね』
「仕方ないですよ、動かし方が分からないですし。それに、燃料が残っているとも限らないですし」
自転車みたいに自分で漕いで動くわけじゃない。見た目は蒸気機関車だけど、本当に動力が蒸気であるかも分からない。もしかしたら、僕たち地球の人間にとっては有毒な物質である可能性もある。
いや、でも残念だなあ。自分で動かせるとは思わないけど、やっぱり動いている姿を見て見たかった。
「残念ですが、別をあたりましょう――気配は、強く残っていますから」
顔を上げて目の前の景色を改めて確認する。
南、西、東。いくつもの方角、いくつもの線路が集中して、一つの建物へ向かっている。
レンガ造りの一際大きな駅舎。真ん中にそびえる塔には時の止まった時計がある。
駅の中。そしてその先にも気配は残っている。
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