アイギス国崩壊危機!

 「おいどういう事だ」

 「この国は崩壊するのか!?」

 「私達はどうすれば」



 俺達が食事をしていると、背後から国民の嘆きの声が聞こえてくる。

 どうやらこの国は崩壊危機に瀕しているらしい。



 「次期国王が決まらないって意外ね」

 「第一王子のアガールは王位継承争いから降りたらしいな。他の三名も名乗り出ない」

 「次期国王が決まらなかったらどうなるの?」

 「どうって崩壊するだろ。若しくは直接民主制の体制を取るか」

 「何で誰も国王の座を欲しがらないのかしらね」



 アーニャはパンを齧りながらそう言う。

 確かに数百年は続いて来たこの歴史ある国を途絶えさせる理由は分からない。

 だが王子たちは誰もこの国の存続を願っていないようだ。



 「リーファどうする? 国が無くなれば教会の存続も危ういぞ」

 「分かってます。取り敢えず次期国王候補者に会いに行きましょう」

 「だな」



 俺達は食事を終えて、支払いを済ませ、第一王子アガールの下へと向かった。


         ◇



 「アガール王子、来客です」

 「誰だ?」

 「アクアラプラスというパーティーの方々です。お会いなさいますか?」

 


 アガールは顎に手を当てて少しの間長考する。

 そして付き人に言葉を告げる。



 「通せ。客室で待機させておけ」

 「畏まりました」



 付き人が部屋から出ていく。



 「ディオスとは目的が違いそうだな」



 アガールは少し微笑みながら、客室へと向かった。



           ◇



 俺達が付き人によって客室に案内されると、豪華なソファーに大きな観葉植物、高価そうな壺が置かれていた。

 


 「お座りになってお待ちください」

 「ああ」



 俺達はソファーに腰かけて待つ。

 それにしても流石王族だな。

 高価そうな物ばかりだ。



 「待たせてしまったようだな」



 少しの時間を置いて第一王子アガールと思われる人物が客室へと入って来る。

 金髪の髪を腰まで伸ばした青年だ。

 豪華な服を身に纏っている。



 「用件は何だ?」

 「率直に伺いますが、王位継承争いから降りたのは何故ですか?」



 俺の質問にアガールは両目を閉じて、微かにほほ笑む。



 「この国に興味が無いからだ」

 「国民を見捨てると」

 「その件ならちゃんと考えてある。万が一他の兄弟が王座につかなかった場合、このアイギス国は近く直接民主制の体制を取る」

 


 やはりか。しかし何故だ。この国に思い入れはないのか?



 「父上の、いや先祖の遺志を受け継ぐ気は無いと」

 「ああ無いな。何故なら俺達四人は母上の連れ子だ。父上の実子ではない」

 


 何!? そうだったのか。

 国王の前妻が死んだ後、再婚したのは知っていたが、まさか連れ子だったとは。



 「母上は現在どちらに?」



 リーファが食い気味にアガールへと質問する。



 「行方が分かっていない。二年前から姿を消している」

 「やはりそうですか。教会内でも噂にはなっていました」

 「秘匿な情報だからな。噂程度でしか出回らないだろう」

 「他の三人も王座を継ぐ気はないと」

 「知らん。それは本人たちに聞け」



 アガールは紅茶をゆっくりと飲みながら質問に答える。



 「アガール様の目的は何ですか?」



 俺は敬語で丁寧な態度でアガールへと質問する。



 「悪いがそれを話す気はない。それよりカースケインが盗まれたのは知ってるか?」

 「カースケイン? 魔導兵器か!?」

 「そうだ。アイギス家代々伝わる魔導兵器だ。地下深くに保管されていたが、つい最近何者かが盗み出した。アクアラプラスにはそれの回収を命じたい」



 魔導兵器とは呪われた杖だったのか。

 通りで部屋のスペースが狭かったわけだ。



 「その魔導兵器とは危険な物なんですか?」

 「起動できればな。アイギス家の血筋のみが起動できる代物だ。噂によると一国を破壊できるらしい」

 「な!?」

 「報酬は前払いで払う。どうだ回収を頼めるか?」

 「暫くはアイギス国に居ると?」

 「いやもう時期出発する。魔伝石で連絡を寄越されよ」



 俺達は少しの間話し合い請け負う事に決めた。



 「分かりました。その任務請け負いましょう」

 「ディオスとは違うな。いい目をしている」

 


 アガールは満足そうな表情で笑って見せた。

 俺達はその後客室を出た。


        ◇



 「他の三人に会いに行く?」

 「いや今はいい。前払いで貰った大量の報酬は一部を除いて教会に寄付しよう。後は水と食料、装備品を購入してカースケインの回収に向かう」

 「分かったわ。やっと冒険者らしいこと出来るわね」



 アーニャが楽しそうにしている。

 相変わらずザ冒険者って感じだな。



 「リーファ、心配なら残ってもいいぞ。この国の行く末は読めないからな」

 「いえ、シスターマディアに任せているんです。大丈夫です。私も行きます」

 「そうか。じゃあ支度して向かうぞ」



 俺達は第一王子アガールの依頼でカースケイン回収の任務を請け負う事となった。

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未来予知スキル《ラプラスの悪魔》は剣聖と組んだら最強でした〜「未来予知なんて偶然だ」とパーティーを追放されたけど、おかげで幸せな未来が確定しました。パーティーは崩壊する未来が見えたけど偶然ですよね?〜 風白春音 @darkblack

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