黒キ塔/少女
影神
悲呪
昔々。
大きな大きな白い塔があった。
その塔は神聖で清らかだった。
塔は唯一。神様と繋がる場所であり、
神様の住まわれる場所としても扱われた。
塔は動物や植物、人間といった生き物達を見守り、
導いた。
だが、時を経つと信仰は薄れ、
生き物達は感謝する事を忘れた。
"まるで与えられているものが恰も当たり前かのように、"
塔は信仰を無くし、穢れを受け続けると、
みるみると黒くなり、忌まわしいモノとなった。
それから塔にはこの世のモノではない者らが、住み着き、
塔を根城にしようと場所を争った。
しかし、どうやっても中には入れなかった。
数々の者らが、奪い合い、戦い、
ようやく強い者が支配するようになった。
それは羽がはえていて、角もあり、狂暴な者であった。
だが、強者の彼もまた、入れはしなかった。
しかし、諦めようとはせずに、
ずっと塔の周りを飛び回り、狙っている。
もしかしたら塔にはまだ力が残っているのかもしれない。
私はそう思った。
私は王に仕え、永い身となる。
王は善き王だ。
民にも慕われている。
それに、悪名名高い奴も倒された。
しかし、奴は倒される前に王に呪いをかけた。
その呪いのせいだろうか、
ようやく産まれた御子息様は若くして亡くなられ、
次もまた僅かながらにして亡くなってしまった。
そうして、次はご令嬢様が産まれなさった。
王はありとあらゆる手を使い、解決を試みた。
だが、次男様も呪いでなくなられてしまわれたのだった。
もう、希望の光は無いに近しかった。
王は頭を抱え続けた。
どうしても、子をお守りしたかった。
遠方まで出向き、自ら足を運ばれた。
その先、この黒い塔を見付けになられた。
こうして、黒い塔に希望を託す事になされた。
それは最後の手段だった。
王妃は心配したが、ご令嬢を生かせる為には他に策はなかった。
王は塔の強者を倒す事にした。
ありったけの聖者を集め、
神具も使えるだけ使った。
結果、
王は、
命を落とされた。
塔の強者は計り知れない程、強かったのだ。
大勢が埃を払うかの様に蹴散らされた。
しかし、ご令嬢様は無事塔へと入る事が出来た。
ご令嬢様は今も尚、塔の中に居られる。
歳はもう、幾つも幾つも重ねて。
塔の力で寿命そのものまでもが不変となったようだ。
ご令嬢様はずっと美しい。
寂しくも、悲しい様な眼差しで塔の外を見つめられている。
死ぬ事も無く、塔から出られる事も無く。
何とも心苦しい。
私はここに記す。
何代と続く
この黒き塔のご令嬢様を見守る
"護り人"
としての役目を果たす為。
いつか、彼女が塔から出られる様に。
黒キ塔/少女 影神 @kagegami
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