変わり映えする筈の明日…。

宇佐美真里

変わり映えする筈の明日…。

毎朝、同じ時刻に目覚ましが鳴り、

毎朝、同じ順番で出掛ける準備をする。

毎朝、同じテレビ番組の天気予報と『今日の運勢』をチェックして、

毎朝、同じ様に左足から靴を履く。


変わり映えのしない毎日…。


毎朝、同じ時刻に家を出ると、

毎朝、同じ信号で待たされる。

毎朝、同じ停留所で、

毎朝、同じ顔ぶれの合間にバスを待つ。


変わり映えのしない毎日…。


毎朝、同じバスに乗り、

毎朝、同じ場所の吊り革を握る。

毎朝、同じ停留所から乗ってくる同じ顔。

毎朝、同じ景色の中を走るバス。


あ………


窓の向こうの変わり映えのしない景色の中に、

昨日までは目には入らなかった、入ってこなかった、

変わり映えのする小さな物を見掛けた。


窓に映る緑の中に、一瞬見えた紫の花。


変わり映えのなかった…色がある様でなかった…

僕の毎日に、モノクロームの世界に一点の色を差す様に、

一瞬映り込んで来た紫色。


あの花は何て花?あの花はどんな花?

彩りを僕の毎日に、

取り戻してくれるかもしれない…

取り戻してくれそうな紫の花。


明日、

もう一度、あの紫色をよく見る為に、

毎朝、通過する筈の停留所で、

途中下車してみよう…。


変わり映えする筈の明日に向け、

今日はひとつだけ、

いつもと違う小さな決意を

僕はした。



-了-

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