眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話

海野しぃる

恋カツをして人生が分かりました!

 大学生の頃に街コンに参加した時の話です。書籍化したのでポーンと印税が入ってきて、とりあえず親孝行に使った後はどうしたものかな~と悩んでいました。折角の大学生活なのに書籍化するまでは色恋沙汰は断つつもりで頑張っていて寂しい大学生活を送っていた事に気が付き、思い切って服を買い髪を整えいわゆる恋活に参加しようと思った訳です。ひとまず目標を達成したので彼女欲しくなったんですよ。

 最初はうまくいくわけないしお金をドブに捨てるくらいのつもりだったのですが、やってみるとこれが意外と面白い。勿論スタイルと顔の良い人々から売れていくのですが、最低限清潔感を保って笑顔で相手の会話に対して傾聴を行い、共感の意思を示していると案外連絡先の交換や一対一のデートまではこぎつけるものです。これは大学で患者さん相手に取るようなコミュニケーションの方法を真似してみたんですが、少なくとも初対面から一歩踏み込むまではこの方法論でいけるみたいですね。現代人は病んでいるのかもしれません。


 さてそんなこんなで同じ大学で5年ほど先輩の年上のお姉さんとデートするようになり、二人でデートに行き、食事をしたり、お酒を飲んだり、動物園とか遊びに行ったりとジワジワ距離を詰めていた時のお話。

 最初から気にはなっていたのですが、彼女はかなり少食な方だったんですよね。私が成人男性かつ大柄なので相対的に少なく見えるだけだろと思っていたのですが、やはり明らかに少ない。あとかなりゆっくりめに食べるタイプだったんですね。

 その日も彼女のペースに合わせてゆっくり食べていたんですが、急に彼女の方が「あんまり食べられないんです」という話を切り出してきた。まあ気づいてはいたもののそこまで気にしてもいなかったので「体質じゃないっすか~」って答えたところ、それがそのものずばり体質的なものだったんですね。個人の特定を避けるために詳しい病名等は伏せますが、その話をきっかけにわりと彼女の事情の込み入ったところまで話すようになって「信頼されてしまった……頑張らなきゃ……」って思ったんですよ。だって男心として弱みを見せられたら燃えませんか? 頼られているんだなって思いませんか?


 頑張ったんですよ。やりました。必死に。でもその結果が失恋。

 さあ何が起きたかについて話していきましょう。

 

 当時、大学では論文が読み放題。普段は不真面目な学生にもかかわらず、うっかりやる気なんて出したものだからさあ大変。彼女の身体で起きている問題について非常に熱心に調べてどういうことを気遣えば良いのかどういう治療が一般的なのか全部全部調べちゃった訳ですね。はい、お話なんて書いているだけあって調べ物大好きなんですよ僕。正直薬学にはあまり興味が無いのですが、状況が状況なので張り切った。張り切りすぎた。

 結果、どうなったかと言うと次回デートでカバンに資料を入れて聞かれてもない話をしちゃったんですよね。そりゃうっせぇわ。いくらその前から近い分野の研究してた同士だからって個人の事情にあまり勢い良く踏み込むべきじゃありませんよ。まあ当然の結果として振られますよね。バッサリいかれましたが、ちょっと思い出すと胸が痛いのでこの話はやめましょうか。

 

 さて、僕の振られザマよりも大事な話をしましょう。僕は今そのお姉さんの年齢に近づいてきて、分かったことがもう一つあります。社会はクソ、労働はクソということです。いやー職場ってきついですよね。それを思えば彼女が話を聞いてくれる年下の男の子とのデートに乗り気になった理由も分かります。仕事の話もある程度理解できるし、細かく愚痴れるってのはなかなか希少価値でした。大学も同じだから共通の話題もあるし、雰囲気は穏やかで服装も地味めだったので、やっぱりそういう点でもクソみたいな労働の日々における癒やしとしての役割を期待されていたわけですよ。

 今になって思えば役割を破壊したのは僕だったって訳です。

 この話から得た女性とのお付き合いの教訓として

・なぜ求められているのか考える

・求められた理由を手放さない

・何を求められているのか常に分析する

 という三つがありました。

 なんと驚くべきことにweb小説によく似ていますね。こういう苦い経験もまた一つの芸の肥やしということで前向きに生きていきたいものです。

 なお恋愛ノンフィクションを書くというお題なので、この三つを元に自分ができることを考えてみると

・自分がなぜ付き合いたいのか考える

・殊更言わなくて良いけど付き合っている理由を自分の中でハッキリさせておく

・自分がしてほしいこととしてほしくないことは素直に相手に伝える

 って感じになります。まあやっぱ何をしたいかって言える人間の方が人付き合いはうまくいきますよね。恋愛以外の全てに言える筈ですよこれは。

 

 最後にもう一度だけ労働はきついということを伝えて終わりたいのですがこれでは恋愛ものになりませんね。彼女が居た時は好きな部署でのびのび仕事していたこともあって、労働も無限におかわりしちゃいそうでした。皆さんも辛い時は色恋沙汰にうつつを抜かしてみませんか? 案外楽しい経験になるかもしれませんよ?


 今は異動先の部署がキツイので婚活レポート編もそのうち書く予定です。楽しみにしていてください。人生について更に苦い真実を分かっていきたいと思うので、期待しててくださいね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

眼鏡の似合う理系のお姉さんと薬学論文の話をしたら振られた話 海野しぃる @hibiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ