第6話:復讐よりも愛
一度死にかけた事で、前世の記憶が蘇りました。
私は転生者だったのです。
記憶が蘇った事で莫大な魔力とスキルが発現しました、笑っちゃいますね。
前世に愛読していたラノベの定番過ぎて思わず爆笑してしまいました。
国王陛下が派遣してくれた治癒術師や薬師が、私が狂ったと勘違いするほど笑ってしまったのは大失敗でした。
「どのような姿になっても、私のソランジュへの愛情は変わらない」
お見舞いに来てくれたナルシスが、屠殺される前の動物のような、強張った真っ青な顔でそう言ってくれました。
欲しくもないスキルのお陰でナルシスの内心が分かってしまいました。
私を嫌われないように必死で自分を律してくれていたなんて、今までの憧れと恩以上の愛おしさが心の中に溢れてしまいました。
「ありがとうございます、ナルシス様。
私のナルシス様への愛も何があっても変わりません。
ですが私も女ですから、少しでも美しくなれるように努力いたします。
表面だけの美しさではなく、内面の美しさも磨いていきますわ」
「ああ、ソランジュ。
私も自分の内面を磨く事を忘れないよ。
だからずっと私と一緒にいてくれ、お願いだ」
この世界に転生することができて、しかもナルシスのような男性を婚約者に得られた私は、本当に運がいいのですね。
ですが永遠の愛の為には、時には嘘も秘密も必要ですから、時にはスキルを抑えたり切ったりする能力も必要ですね。
頑張ってスキルを使いこなせるようになると同時に、徐々に顔を完全治癒させて、更にナルシス好みの顔に変化させていきましょう。
私だって女ですから、美しくなりたい願望はあるのですもの。
「ソランジュ嬢、王家の面目にかけてセヴリーヌとオディロンはこの世の果てまで追いかけて殺す。
ソランジュ嬢のケガも王家の総力をあげて癒して見せる。
ジョイシー男爵家は王家が責任を持って滅ぼして、その領地はソランジュ嬢の台所領として子供に相続させる事も認める。
この度の失敗はそれで許してもらいたい」
「許すなどとんでもございません。
国王陛下が救いの手を差し伸べてくださらなかったら、私は殺されていました。
恩に思いこそすれお恨みするような事は一切ございません。
ただ私にも女心がございますから、治療はありがたくお受けさせていただきます」
国王陛下には好印象を持ってもらえたようです。
遠回しに復讐代行も男爵領も辞退したのですが、台所領を頂くことができました。
これで余計な事に力を使わずにナルシスとの結婚準備に集中できます。
それに、スキルを得た私は復讐しようと思えばいつでも二人を殺せます。
ですが、直ぐに殺すよりも追い回されて逃げる方が二人に辛く苦しいでしょう。
私がナルシスと幸せに暮らす方が復讐になるでしょう。
こう見えて私は陰湿なので、その方が私の復讐らしいですからね。
伯爵令嬢は婚約者に横恋慕した義妹の手先に顔を斬り裂かれる 克全 @dokatu
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