第7話告白(友人)

「私、ずっと前から佐々木くんの事が好きでした!付き合って下さい!」



『「え」』


 目の前で友人が告白されているのを目撃し、あまりの出来事に2人とも固まってしまった。


 告白現場なんて初めて見た。いや、普通はそんなに頻繁に目撃する事なんて無いだろうけど。と言うか奏ってやっぱり人気があるんだなぁ。


「どうするんだろ、奏」 

「やっぱり気になりますか?」

「そりゃ、これでも長年の付き合いだからな。自分の友人が誰かに好意を向けてもらっているなら俺は1人の友人として素直に嬉しいかな」


 結局、奏は告白受けるのだろうか?もし受けるのであれば心からお祝いしないとな。そして、この告白現場を覗いてしまった事も謝らないとな……。そんな事を考えながら覗いていると奏が真剣な表情でゆっくりと口を開く。


「ありがとう、でもごめん」

「どう……して?」

「俺は君の気持ちには答えられない。他に好きな人がいるんだ」

「そうなんだ……」

「本当に………ごめん」

「そっか……頑張ってね」

「……うん、ありがとう」


 奏は走って戻って行く女子生徒の背中を見送った後フェンスに身体を預けて空を眺めていた。


 告白して来た女子は勇気を出して奏に告白したのだろう、一生懸命考えて覚悟を決めて色々準備もして。その気持ちを無碍にするはやっぱり心が痛いのだろうか。


「奏……」

「佐々木さんも辛い思いでしょうね。勇気を出して想いを告げてくれた好意を踏み躙るような行為はやっぱり嫌なものです」

「天星もそうなのか?」

「はい。でも真剣に応えないと相手にも失礼なので」

「………そっか」


 天星は遠い目をして外の景色を見つめていた。

 きっと天星にも思い当たる所があるのだろう。確かに告白する人は勇気を出して頑張って告白するはずだ。でもそれ以上に結果を出す方は例え良い答えや悪い答えだろうと勇気を出して答えを出さないといけないのだから。


 後で奏に何か声をかけた方が良いのだろうか?でもなんて声を掛ければ良いのか分からない。


「そういえば佐々木さん、好きな人がいるとおっしゃってましたよね」

「あぁ、確かにそう言ってたな」

「霧原くんは知っているのですか?佐々木さんの好きな人」

「いや、知らないな。あいつ自分の事はあまり話さないし」

「そうだったんですね」


 奏の好きな人か。友人の個人情報を詮索するのは駄目だと分かっているがちょっと気になる。今度聞いたら教えてくれたりしないかな。


 そんな事を考えていると奏が笑ってこちらを見ている事に気が付いた。慌てて姿を隠すも確実にこちらに気が付いていることが分かった。


「おい、そこに居るんだろ律」

「!?…………何故バレた」


 実は奏は律斗が隠れて覗いている事に最初から気が付いていた。だけどわざと知らないフリをして、告白されていたという事だろう。


「ずっとコソコソ話しているのが聞こえて来たからな」

「なんかその……すまん」

「良いよ別に、俺は気にしていないからさ」

「良かったのか?告白断って」

「聞いていなかったのか?俺には他に好きな人がいるんだよ」

「まぁ、聞いていたけどさ……」

「ところで律よ、なんでまだ隠れているんだ?」

「そ、それはだな……」

「ん?もしかして気まずいのか?」

「い、いや、そう言う事じゃなくてだな」

「ん?そういえばお前誰かとコソコソ話していたよな?」

「えーーーっと……」


 マズい、今出ると天星さんが居ることがバレてしまう。狭い部屋の中に男女がいるこの状況を見られるとタダじゃ済まされない。どうにかして天星さんの事を隠さないと。


「もしかしてこれマズいんじゃ……」

「大丈夫だ、天星さんはとりあえず奥の方に隠れてて」

「は、はい!」

「何コソコソ1人で話してるんだ律?」

「い、いや!何も!?断じて何も話してないけど!?」

「いや、明らかに動揺してるだろ」

「そ、そんな事より、もう昼休みが終わるだろ?ほら、そろそろ教室に帰らなきゃ次の授業に間に合わないんじゃないか?」

「それはお前も同じだろ」

「あ、それもそうか」

「ほら、馬鹿言ってないでそろそろ出てこいよ」

「あ、」

「え?」


 律斗が奏と話して時間を稼いで渚沙が奥に隠れられるように仕向けようとしたその瞬間、隠れようと物を退かしている渚沙に積み重なっていたダンボールが上から倒れて来るのが見えた。


「あ、危ない!」

「きゃっ!」


ドサッ


 律斗はダンボールが落ちて来るのを咄嗟に庇ったので渚沙を押し倒してしまった。怪我が無かったのは良かったけれども……


「だ、大丈夫か?天星さん」

「ひゃ、ひゃい……」

「ん?なんか中で凄い音がしたけど大丈夫なのか?とりあえず開けるぞ」

「あ、今開けるのはちょっと待っt……」

「大丈夫か?り……つ?」

『「あ」』


 律斗の言う事を無視して部屋に入って来た奏が渚沙を押し倒している律斗を見て固まる。正確には落ちてくるダンボールから渚沙を守った結果押し倒してしまう形になってしまったのだけれども。


「これはその……」

「えっと……」

「ご、ごゆっくり〜……」

『「ちがぁぁぁう!」』


 こうして奏の告白劇は最悪の展開で幕を閉じたのだった。

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雨が嫌いな普通の少年がもしも雨が好きな学校1の美少女と出会ったら? ヒイロ @Repop

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