13. 執筆よもやま話
この
実際には、わたしの大伯父にあたる方で、大伯父が特に可愛がっていたのは、わたしの母である(姪っ子が、可愛くて仕方がなかったらしい)。
終戦をアメリカ本土の日系人収容所で迎えた幼少時代の大伯父は、それはそれは苦労したであろうに、とてもご陽気でバイタリティー溢れる、屈託ない方だったそうだ。
母は、そんな大伯父を、親しみを込めて「アメリカのおじさん」と呼んでいる。
そんな大伯父には、最期まで不思議エピソードがついてまわる。
母曰く、大伯父はどうやら臨終間際に、母の夢枕に立ったのだそうだ。
シルクハットにモーニングという正礼装で、白手袋にステッキを構え、帽子をちょいっと持ち上げて、母に向かって「バァーイ!」と告げて、ご陽気に去っていったのだという。
目が覚めて「変な夢……」と思った母の元に、その後、大伯父が亡くなったとの一報が入った。その時初めて、「ああ。あれはわざわざ、お別れの挨拶に来てくれたんだ」と合点がいったと母は言う。
そして、わたしはその話を聞いて「これぞ!」と思った。
何て素敵なネタなのだ、と。
ご尊顔を拝したこともない母方の遠戚をネタに、好き勝手に一本書いてしまった……。不届きな
この話では、福寿の死までは描かなかったが、きっと別れの時が来たら、福寿も同じように弥々子の夢枕に、ご陽気に立つのだろうと思っている。
そして次に、弥々子が「不幸どん底」になるとしたら、きっとその時なんじゃないか、とも。
当物語で、誰よりも突飛な設定といえる人物に、唯一、モデルがいる——現実は小説より奇なり——とは、まさしく言い得て妙だと思う。
尚、チャムちゃんに関しては、そもそもファンタジー住人なので除外する。
わたしにも、彼女が何者なのかは分からない。
事例二に続いたら、今度はどんな姿で現れることやら……。
そんなわけで、最後まで「魔法通り」にお付き合いいただき、ありがとうございました。シリーズ化できるように頑張ります。
魔法通り5時31分 ~騒々しい我家~ 古博かん @Planet-Eyes_03623
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