第2話 こうかいこうかいこうかいこうかいにっし
「君には、目の前にある本を読んでもらいたい」
「はぁ……」
新しいアイテムが手に入ると毎回実験台にされるから、たまったもんじゃないね。
ま、給料も弾むからいいんだけどさ。
「んで……」
これを今から読むのか?
黄ばんでて、なんとも古そうな本だが……。
「早くしろ」
「へいへい……」
しぶしぶ手に取る。
独特のほこりっぽい臭い。
そして、どことなく海の香り?
「タイトルは……こうかいにっし?」
表紙にはきれいな字ではあるがなぜかひらがなでそう書かれている。
「誰が書いたのかは……書かれてないな」
とりあえず、ページをめくる。
内容は、日付とその日の出来事。
「ええと……まあ、日誌だな」
「黙読してみろ」
音読じゃないのは、呪いの類だと思ってるからか?
つくづく人使いが荒いぜ。
「さてさて……」
目を通す。
(3月1日、こうかいを開始した。乗組員はみなやる気のようだ。私は持病が心配だが、国のためにも全力を尽くす)
普通だな。
パラパラめくる。
(3月14日、こうかいは大きい。ここまでとは。なかなか島が見つからず、若干乗組員の士気も下がっているようだ。そして、腹が痛む。薬で収まってくれればいいが)
ふむ。
ちょっと不穏だな。
(4月3日、こうかいするか? 迷うところである。なんの成果も挙げられていないこの日誌を見れば、国王はさぞお怒りになるだろう。さらに、乗組員は長い船旅の影響か、病気や精神疲労で徐々に弱っている。かくいう私も持病が悪化し、立っているのがやっとである)
おやおや、いよいよまずそうだな。
続きはどうな……。
「うわ!!!」
――――――――――――――――――――
「ナンバー348『こうかい日誌』について、報告を」
「先日のアレか」
「あの後、彼は?」
「後悔ばかりしてますね」
「具体的に」
「あんなもの、見なきゃよかった。見るくらいなら、生まれてこなきゃよかった」
「そう言ってます」
「ほう」
「カメラなどを通した場合、呪いの効果を無効化できることが判明したので中身を確認した結果、あるページ以降は最後まで『こうかい』とだけ書かれています」
「それで、彼は最後になにを見たんだ?」
「それはわかりかねます」
「しかし、確認できる限り日誌の体をとっている最後のページがこれです」
一枚の写真を手渡された。
小さな文字に目を凝らす。
(4月35日、こうかいしている。こうかいをこうかいしたことをだ。こうかいをすることがわかっていたら、こうかいしなかったのに。今さらこうかいしても、こうかいはやめられん。こうかいの真っ只中でこうかいしたことをこうかいしながら、いつかこのこうかい日誌がこうかいされないことを願う。こうかい先に立たず。最後にこうかいて締める)
異世界アイテ厶管理局 砂漠の使徒 @461kuma
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