第135話

「纐纈君は、思ったよりすごくて、ちょっと戸惑ったんだよね」

「え?」

 鈴里の顔の半分が、影になった。

「どんどん勝って、優勝したり、すごく強い人に勝ったり。プロにも勝っちゃった。勉強までできて、なんか、遠い人になっていく気がした」

 太陽は、想像していなかった言葉に目を丸くした。

「僕が? 遠く?」

「うん」

「百合草さんの方が、遠い存在なんだと思ってた」

「私が?」

「絶対持モテるし」

「そう思う?」

「野球部の人は?」

「……断った」

「そうなんだ」

「知ってたんだ。意外と、目ざとい」

「たまたま」

「それ、気にしてたんだ」

「気になってたから……僕にはいるかもしれないと思ったんだ」

「好きな人ってこと?」

 ゴンドラが地上に近づいてきた。係員の姿が見える。時間切れが近い。

「そうだよ」

「考えないとわかんないんだなあ、纐纈君は」

「百合草さんは?」

「はじめて会った時から、はっきりしてたよ」

「そうなんだ!」

 扉が開けられる。勢いよく飛び出した鈴里は、太陽に手を差し出した。

「私、まだまだいろいろ乗りたい!」

「オッケー」

 太陽は立ち上がり、鈴里の手を握った。

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