第6話

 放課後、将棋部の部室、三人で活動中。


「親密度を上げるには、名前で呼んでもらうのが一番!」


 握りこぶしを天井に突き上げた妹さんの言葉に、僕と先輩は対局の手を止めた。


「・・・急にどうしたの?」


 はあっとため息をつきながら、先輩は妹さんの方をちらりと見る。あきれているのが目に見えて分かった。


「まあ聞いてよ姉さん。今日ね、友達と、親密度を上げる方法について話してたんだけど、相手に名前で呼んでもらうのが一番だって言われたの!というわけで、姉さん、カモン!!」


 ニコニコと笑顔を浮かべる妹さん。もしも妹さんにしっぽが生えていたとしたら、今頃ブンブンと大きく揺れていることだろう。妹さんの姉好きは、とどまることを知らない。


 ・・・・・・あれ?でも確か・・・。


「名前呼びって・・・私、あなたのことはいつも名前で呼んでるんだけど・・・。」


 ・・・冗談ですよね。さすがの妹さんも気づいてなかったなんてことは・・・。


「・・・は!」


 ・・・ええ~。


 妹さんの姉好きは、とどまることを知らない。少なくとも、思考が退化するほどには・・・。


「じょ、冗談だよ~。あ、あはは。本当は、・・・えっと・・・そう!後輩君に名前で呼んでもらおうと思ってたんだった。」


 妹さんの顔が、僕の方に向けられる。まさかの流れ弾!


「ちょ、急にそんなこと言われましても・・・。」


 いつも『妹さん』とばかり呼んでいる自分にとって、名前呼びなど気恥ずかしいことこの上ない。


 こんなときは・・・先輩に助けを求めるのが一番!


「・・・ふむ。ちょっと見てみたいかも。君の名前呼び。」


 ・・・・・・詰みました。


「さあ、後輩君、カモン!!」


 ・・・・・・


 ・・・・・・


「・・・い、妹さん!」


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 お二人とも、そんな目で僕を見ないでください。





今日の将棋部活動日誌

・名前呼び



 ・・・消えてしまいたい。

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とある将棋部員たちの日常 takemot @takemot123

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