第2話 すれ違い

「は、はい! 確かにキスですね!?」


「うん。 そうだね」


「…………??」


「…………??」


 女の子は何故かキスを見て、頭の上に?マークを浮かべる。 コテンと首を傾げる姿はあざとくて可愛かった。


 ちなみに俺も頭に?マークを浮かべながら、コテンと首を傾げている。


 なんだこれ。 第三者が見たら吹き出しちゃうぞ。


「そ、それで、返事はいただけますか……?」


 女の子は不安そうな表情で俺に聞いてくる。


 俺はなんのことか分からなくて、パニックになってしまった。


「えーと……ごめん。 返事ってなんのこと?」


「え、せ、せっかく勇気振り絞ったのにぃぃぃ……うぅ、惚けないでくださいよぉ」


 女の子は涙目で声を震わせる。


 とりあえずなんのことか分からなかったけど、俺はなんとか元気づけようと頑張った。


「か、悲しい時は別のことをしたら気が紛れるよ!?」


「えっ?? 確かにそうですけど……」


「だから、一緒にキス(釣り)しないかい!?」


「えっ!? なんでそうなるんですか!?」


 女の子がパニックになる。


 自分もパニックになっていることは分かっているけど、今の状況意味不明だし、とりあえず勢いのままいっちゃえ!!


「大丈夫! 僕が手取り足取り教えてあげるから!」


「えっ!? そんなに経験豊富なんですか!?」


 真っ赤だった女の子の顔が少し青くなる。


 目は漫画みたいにグルグル渦巻いていた。


「大丈夫! 最初は知識とかなくて不安かもしれないけど、やったらどうってことないから!」


「それでも初めては大切にしたいですよ!!」


「うんうん。 その気持ちはよく分かる。 でも、あんがいキス(釣り)って奥が深いから、経験者とやった方が安心するよ」


「えっ……奥が深い……?? も、もしかして大人のやつーーーー」


「はははっ。 まぁ、キス(釣り)は大人っぽいかもね。 でも、大丈夫。 あんがい子どもでもできるっていうか、簡単だから!!」


「はわわわっ……何言ってるのか全く分からないけど、なんだか凄い自信だぁ」


 女の子はガクガク震えながら後ずさる。


 うん? 寒いのかな? 夏とはいえ、早朝の海は寒いからなぁ。


「大丈夫? 寒いの??」


「いえ、そういうわけではないんですけど……」


「なら、良かった。 キス(釣り)は外でしか出来ないからね!」


「キスって中でも出来ますよね!?」


「…………?? なにを言ってるんだい君は?」


 キスは海がないと釣れないじゃないか。 まぁ、釣り堀とかでキス釣れるのかもしれないけど、今は無理だろ。


「えっ!? あたし、なにか変なこと言ってます!?」


「うん。 ちょっと変なことを言ってると思う」


「そ、そんなぁ!? 私の常識は間違っていたっていうの!?」


 女の子は四つん這いになってショックを受ける。


 この子、顔を赤くしたり真っ青にしたりと忙しい子だなぁ。


「うぅ……難しい。 キスって難しいよぉ」


「だから、経験者とやれば大丈夫だって。 竿も貸してあげるから」


「さ、竿!?」


 女の子は口元を腕で隠し、思いっきり後ずさる。


 あれ? そこ反応するところ??


「キ、キスより上なんて……今のあたしには無理ですぅぅぅ!!」


「あっ、ちょっと待ちなよ君!!」


 俺の静止なんてガン無視で、女の子は砂浜を走っていく。


 防波堤の近くに置いていたチャリに跨ると、今まで見たことがないぐらいのスピードで、俺の視界から消えていったのだった。


「な、なんだったんだあの子……?」


 俺は宙ぶらりんになっていた右腕を下ろす。


 そして、釣りを再開した。


「変わった子だったなぁ」


 俺の中であの子は元気があって可愛い女の子だったんだけど、今は評価が変わって元気な不思議ちゃんになっていたのだった。

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釣り好き大学生、褐色美少女JKに『キスです!』と言われる。〜うん。 確かに今釣り上げたのはキスだよ?〜 @raitiiii

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