釣り好き大学生、褐色美少女JKに『キスです!』と言われる。〜うん。 確かに今釣り上げたのはキスだよ?〜

@raitiiii

第1話 キスです!

 少しずつ日が上がり、近くの山からは蝉の鳴き声が聞こえる。


 ザザーンと砂を打ちつける波の音が心地よく、朝が早いということもあり、俺、高垣凉たかがき りょうは眠たくなって欠伸が出てしまった。


「ふぁぁぁ……ねみぃ」


 今日は5コマしかない日だから、キスを釣って捌いて、道具とか片付けて飯を食って寝るのが1番だな。


 俺は竿をちょっと振る。 投げた釣り糸は、波打ち際の浅いところにポチャンと落ちた。


 釣り糸がピンッと張っていた状態から弛む。


 リールをゆっくり巻いて、仕掛けをズリズリと引いた。


「かかってくれよぉ〜俺の食料ちゃ〜ん」


 そんなことを呟いていると、ビビッと竿先が動く。


 おっとと……まだ針掛りしてない感じだなこれ。


 落ち着いて落ち着いて。 ちょっと待てば強い引きがくるはずだ。


 俺は40秒ほど待つ。


 すると、竿先がさっきよりも激しく動いたので、俺はリールを巻いた。


「ほっと! 一丁上がりぃ!」


 釣り上げたキスは20cm前後。 うんうん、狙い通りだ。


「さて、ドンドン釣るぞぉ〜」


 俺はキスを釣り針から外し、バケツの中に入れる。


 そして、もう一回竿を振ろうとした。


 しかし、俺の動きはある声によって止まった。


「あ、あの!!」


「ん?」


 声がした方を向くと、そこには褐色美少女JKがいた。


 女の子の中でも小柄で、右目を前髪で隠している。


 緊張しているのか額には汗が浮かび、両腕は胸の辺りでギュッと握られていた。


 着ている水色のセーラー服は涼しげで、ここら辺にある女子校の生徒だということを示している。


 あれ? この子って時々見る子だ。


 いつも部活の朝練があるのか、朝早くからチャリで爆走をしている。


 そんな感じで漕いでいるから、高確率でスカートの中が見えるんだよな。


 ま、いつも競泳水着を着ているから、恥ずかしくないのかもしれない。


「はい。 なんですか?」


「あ、あの……そのっ……」


 女の子は顔を赤くしてモジモジする。 その姿はなんだか小さな子どもみたいで可愛らしかった。


「大丈夫です。 なにかあるなら聞きますから、落ち着いて落ち着いて」


「すぅ〜はぁ〜……はい、落ち着きました! すいません。 時間を取らせちゃって!」


「いえいえ、別に大丈夫ですよ」


 褐色美少女JKと会話できるなんて嬉しいしな。


 俺はボケーとそんなことを考えながら、女の子を見る。


 女の子はギュッと手を握って、震える声で俺に話しかけてきた。


「あ、あの!! 『キス』です!!」


 ………………???


 場に静寂が流れる。


 俺はとりあえずバケツを女の子の方に見せながら、こう言ったのだった。











「うん。 今釣り上げたのはキスだよ?」

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