隣人さんは変人さん

黒心

隣人さんは変人さん

拝啓、探偵になる君へ

 夏の暑い中最近怖い事件が近くで立て続けに起こってますが俺は元気です。


 俺は新築のアパートに住んでる。飛騨山脈の真ん中の田舎から飛び出してきたただの一般人だ。アパートと言っても床はフローリングで赤が基調の風呂とトイレ、電子キーが付いた扉まである。もともと住んでいた所なんて風呂の天井が狭っ苦しくてトイレも調子悪いと流れないし玄関の鍵なんてあって無いようなもんだったからな。それと比べると俺の中の家の定義なんて天変地異が起こるわけよ。家主さんは優しいおじいさんだし下の階の若い夫婦はよく相談に乗ってくれる。すげぇよ。

 もうきた初日から俺の中で常識が崩れ去っていくのを感じたんだ。


「……」


 それはさておき、一つ変なことがある。


「……」


 このアパート新築何年とかそんなんだけど、トイレに穴空いてるんですよ。まぁ勿論、早速覗いてみるんよ、女子更衣室の部屋に空いた穴の如くね。トイレに空いた穴は真っ赤っかで何も見えなかった。確かこの穴の先にはシンプルに考えて隣人さんの部屋があるはず。ああそうそう、俺の部屋は西日が入ってくるところ、安かったもんでここにした。だから穴が空いて外が見えないということは、隣人さんの部屋以外にはあり得ないんだよな。家主に聞くと隣人さんは雨の日にあったきりでよく顔を見てないらしい。執拗に監視カメラも置いてるんだけど何も映らない、真っ赤な穴しかね、見えないなぁ。


「うーむ、断熱材かなぁ」


 最終的にこうなった。家主さんにトイレの穴のことを話して来週塞いでもらえる事になった。隣人さんの玄関に行ってピンポン押しても何も反応ないし、トイレから見えないし、何とか隣人さんに会えないかと思ったけどそこまでする事か?と思って家賃稼ぐためにバイトに行った。


 数日後、優しい家主さんは早速穴埋めの道具を買ってきてトイレの穴を塞がないかとやって来た。困ってたんですよ、なんか覗かれているようで悪寒ですかね?寒気がするんですよねぇ、的な話をしながら穴を塞いでもらった。


「あのー、このトイレの隣は断熱材ですよね」


 なんか気になって、聞いてみた。そしたらびっくり仰天家主さんは言ったんだ。


「断熱材?あぁ、確か設計ミスで入ってないらしいんですよ」


 へー、そうなんですかぁ、と返して家主さんは穴を道具で塞ぎ終わって立ち上がった。


「確かに……なんか寒いですねぇ」


 今までこれが普通かと思っていたが家主さんはそう言った。まぁ個人先によるところが大きいだろうし気にしなかった。ともあれ、トイレの穴は塞がって悪寒も治ったし万事解決。隣人さんの事が分からなかったのは残念だけど、仕方ないね。


 どうかな、少しハプニングがあったが大したことはなかったしそれよりか家主さんと暢気に話せるようになったからね、だがらトイレの穴のことはすぐ忘れるよ。


 元気してるかい?未来の探偵さん。出来るだけ早く家にアソビに来てくれ。


敬具

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