第38話 エピローグ
「――終わったぞ」
「お疲れ様」
あいつの妹の葬式が終わった後、俺はその足で病院へと向かった。
「それでどうだったの?」
「どうもこうもないよ……。親族達からどれだけ怪しい目でみられたことか。それに全く知らない人の葬式に行く奴の身にもなってくれよ」
「しょうがないじゃない。私が行けないんだからその代わりよ」
「そうなんだけどさ……」
包帯でぐるぐる巻きにされた足を見ながら嘆息する。
あの日。俺達はあのまま二日酔いの頭痛を抱えながら昼前には無事に帰った。
でも彼女の足の痛みが悪化し、しまいには大きく腫れてしまったので家に帰ってすぐに病院に行かせた。
結果、彼女の足は骨折していることが判明して、彼女はそのまま入院することになった。
入院生活を余技なくされてしまった彼女は、当然妹の葬式にも行くことが出来なかったので、俺が代わりに行ってくることになったのだ。
……まぁ、代わりで葬式に行くなんて普通ならおかしな話だが。
「どうだった、私の妹可愛かったでしょ?」
「まぁ……」
「変態っ」
「いやっ、お前から聞いてきたんだろうがっ」
妹の死について悲しんでいるかと思って気を遣っていたんだけど、この様子だと全然大丈夫みたいだな……。
まぁ、ただの空元気の可能性もあるんだけど。
「あぁ、あとお姉さんから連絡あったぞ。また一緒に家出しよ~って」
「そんなの無視しなさい無視」
すると彼女は分かりやすく機嫌を損ねる。
ふっ、俺の気遣いを無駄にした仕返しだよ。
「……そういえばあなたは大丈夫だったの?」
「ん?何が?」
「その……家の人のこととか。学校もサボって、無断外泊までして何も言われなかったの?」
深刻な表情をして言ってくるものだからもっと大事な話かと思ってたけど……なんだそんなことか。
「すごい今更だな。まぁ、別に俺の両親は放任主義だからな。ある程度自由にやっても特に何も言われないよ」
「そう。ならよかったわ」
どうやら少しだけあの日のことを申し訳なく思っていたようだった。
妹の死もあってあの日は大分切羽詰まったようだった、と彼女は言っていたけど、俺からしたらいつものとなんら変わりない彼女だった。
だから対して気にもしてない。
「はぁ……これからどうしましょうか。誰かさんのせいで私の人生設計はめちゃくちゃになっちゃったからな」
明らかにこちらを見て大きくため息を吐く。
「……その誰かさんってのはもしかしなくても俺のことか?」
「当たり前じゃない」
いや、でも当たり前だなんて言われてもな……。
「私は大人になる前に死ぬ予定だったんだよ。それを君がやめさせたんだからこの責任……しっかりとってもらうからね?」
はぁ……。どうやら俺はこれからもまだまだこいつの理不尽に付き合っていかないといけないらしい。
まぁ、それに逆らえない俺も俺なのだが……。
「程々にお願いするよ」
「そんなのあなたには関係ないんじゃない?」
「はぁ……。そっすか……」
どうやら俺の非日常はこれからもまだまだ続くようだった。
まぁでも……。
こいつが相手なら別にそんな悪い気はしないな。
本人には絶対に言えないけど。
今日死ぬ君に 降木星矢 @furuki3939
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