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「…よし、これで終わった!」




私は、今書いていた日記帳を閉じて背伸びをした。


時間はもう夜遅くなっている。

窓の外を見ると、そこはひんやりとした空気が漂っていた。

夏でも、夜はやっぱり少し冷たくなる。








「お母さん!」


私は、夜ご飯を食べた後、ロビングにいたお母さんの所へ向かった。

「ん?」

「あのさ、お願いがあるんだけど…。」


そう言って、私は日記帳をお母さんに渡した。

「これを少しの間、これを預かって欲しいんだよね。」

「あら、日記帳?」


お母さんは、私の日記帳を手に取った。


私は、渡した後で言葉を続ける。

「もし今後、山本って人がここに来たら、渡して欲しいの。」

「山本くん…?学校の友達なのかしら?」

「うん。できれば、お母さんとお父さんは中身を見ないで欲しい。」




―――ごめんね、お母さん。お父さん。


   ―――あの人に知られる前に内容を知られたら、困るんだ。



私は、心苦しくなった。




そんな私の胸中を知らず、お母さんは素直に頷いてくれた。

「分かったわ。お父さんにも見せないし、お母さんも見ない。」

「ありがとう、よろしくね!」

私はそう言うと、リビングを離れて自室に戻ろうとした。





そして、後ろからお母さんの声が追ってくる。





「そう言えば、進路とかはもう決まったの?」




「え、あぁ…うん、担任の先生と話し合ってる途中なんだ。」

私は、振り返って答えた。


「あら、そうなの。そろそろ三者面談かしら?」


「そうだね。また日程とか進路が確定したら伝えるね!」



短くそう返すと、私は早足で自室に戻った。








「…もう進路は考えなくてもいいんだけどなぁ。」



私は気だるそうに言ってから、近くにあったベッドに背中からダイブした。




―――きっと、君が「本当の私」を探してくれる。




それは、数か月も前から信じている。


それでも、本当に探してくれるか不安もある。


「君はぼんやりしているからなぁ…。」


ボソッと、声に出してみる。


君が聞いていたら、「ぼんやりしている訳じゃないよ。」と反論してきそうだ。


不安でも、私は君を信じるしかない。




「探してね、山本くん。」




この日記帳までたどり着いてくれれば、あと少しだよ。




私はそこで、意識を手放して夢の中へ入った。











―――私の死ぬ8月5日まで、残り1日のことだった。

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