8月17日―――再度の訪問者。
…大変なことになった。
―――と、僕は朝から感じずにはいられなかった。
「久しぶりだな、山本。受験勉強はどうだ?」
僕は、目の前にいる1名の大人を前に、首を縦に振りざるを得なかった。
「…おはようございます、先生。」
ことの始まりは、8月16日に遡る。
僕はその日、彼女からのメッセージを頼りに、「最後の行動」を考えていた。
ヴーーーッ、ヴーーーッ、ヴーーーッ…
ちょうどその時、自分のスマホが大きく震え出した。
「あれ…誰からだろ。」
僕は、なんとなく嫌な予感を感じながらも、その電話に出た。
「もしもし。」
『もしもし、担任の佐藤です。山本の携帯か?』
…この一瞬、僕は深く考えず電話に出てしまった自分を酷く後悔した。
「はい…山本ですけど。」
『おぉ、よかった。』
電話先の相手は、どこか明るい感じでそう言った。
そんな相手の気楽な話し方に、どこか腹立たしさを覚える。
「どうしたんですか。」
冷たく言い放つと、担任も真剣な言葉に戻った。
『進路の話だ。」
「え。」
『お前だけ、まだ進路希望調査を出してないだろ。』
僕は、机の引き出しを開けた。
そこには、ぐしゃぐしゃに丸めた進路希望調査書があった。
…やってしまった。
『とにかく、明日、お前の家に行くからな。』
電話先の相手は、そこでプツッと電話を切った。
そして、現在に至る。
「山本。進路希望調査書を出してみな。」
担任は、僕に固い口調で言った。
僕は、昨日徹夜で考えた進路調査書を渡した。
「…お前、本当に言ってるのか?」
担任は驚いた表情で僕を見た。
彼が驚くのも無理はない。
僕は、大真面目に「進路はない。」と書いたのだから。
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