%&$?>*+―――④


「お姉ちゃん、久しぶり!」

「え、来てくれたの?さぁさぁ、中に入って!」



雨の中、あの子が私の家に来てくれたのは、7月下旬の蒸し暑い日だった。



「急にごめんね。忙しくなかった?」

「まぁねぇ。子どもの面倒を見たり夏休みの宿題を手伝ったり、大変だよ。」

あの子の言葉に、私は笑って返す。

「そっちも受験真っ只中でしょ?忙しいのに会いにきてくれてありがとう。」

「うん。まぁ、受験はなんとかなるかな~って感じ!」


元々、頭が良かったのは知っていたので、あの子の言葉に嘘はないと思った。

「そうなんだ~。もしよければ、今度勉強とか見るよ。」

「えっ、ホント!そしたら電話で色々と教えてもらおうかな。」


昔と変わらず、ケラケラ笑いながら明るく話すその姿が、妙に懐かしく思えて、私も思わず笑みがこぼれた。




「今日来たのはね、ちょっとお願いがあって。」


少し話した後、あの子はそう切り出した。


「いいよ。全然なんでも言って!」


私は前傾姿勢になって、話を聞く姿勢を作った。

あの子は、自分のバックから茶封筒を出し、私に手渡してきた。


「もし今後、山本って子が来たら渡して欲しいの。」


私は目を見開いた。あの子がこういうお願いをしてくるのは、これが初めてだった。


「私が、その山本…って子に渡すの?」

「うん。その子は、8月あたりに絶対に来ると思う。」

あの子は私にハッキリとそう言った。


「もしかして…ラブレター?」


私は、気になって聞いた。向こうは思いっ切り手を横に振る。


「全然違うよ!その子、かなり大人しい子だから、全然話したことないの。」

「え、あまり面識のない子に渡すの?」

「うん。ちょっとこれから、面白いことが起きるの。」


あの子は、いたずらっぽくそう言って笑った。








あの子の表情は、まるで太陽みたいだった。




山本くん。




どうか、あの子が残したかったことを、あなたが見つけて欲しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る