8月13日②―――離れた場所にあった「鍵」。
「私の母の妹の子どもなんです。」
女の人は、僕にそう伝えてくれた。
まじまじと見てみると、確かに佐藤の面影がある。
パッチリと開かれている目元とか、鼻筋が通っている所とかは、佐藤を想像させる。
女の人は、一度席を外して何かを取りに行った。
僕はその間、ずっとこれからのことを想像していた。
彼女は、僕に何かを残している。
―――そしてそれは、どこかで必ず繋がっている。
女の人は、すぐに帰って来た。
手には、茶封筒を持っている。
「山本くん。これは、従妹からあなたへの手紙です。」
僕は女の人から封筒を受け取り、中身を見た。
その中には、また数行しか書かれていない手紙が入っていた。
【―――】
「!」
僕は、佐藤が書いたその文章に、何度も目を通した。
これは…。
「8月に入る少し前、あの子が私の家に訪ねて来たんです。」
女の人は深呼吸の後、続けた。
「ほんの少ししか滞在しなかったんですが、その子は私に手紙を預けて、『これを、山本って人が来たら渡して欲しい。』と何度も言って、帰っていきました。その手紙の中身は見ていません。」
「………渡して下さって、ありがとうございます。」
僕は、深く頭を下げた。
「ちなみに、佐藤はあなたに何か言っていましたか?」
女の人は、思い出すように遠くを見た。
「いや、特に何も言ってなかった気がしますが。」
「そうですか。分かりました。ありがとうございます。」
僕は席を立った。
次に行わなければいけないことが、明確になった気がする。
「あの子と山本くんの関係は、よく分かっていませんが………あの子が山本くんに何かを託したということは、何かをして欲しいのだと思います。」
最後、女の人は僕に言った。
「もしよかったら、最後まで、あの子を見つけてみて下さい。」
「はい、もちろんです。」
僕はハッキリと断言し、レンガ調の家を後にした。
佐藤、お前やってくれたな。
僕は茶封筒の手紙を見た。
そこには、また僕が行わなければいけないことが書かれている。
ここまで来たら、とことん突き詰めてやる。
本当の佐藤を見つけるまで、諦めない。
僕は手紙を握りしめ、足早に帰宅した。
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