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遡ること、8月某日。
私は幼少時の友人を呼びだした。
―――彼女にも、山本にしたように「お願い」をする為に。
数年ぶりに会った友人は、幼少の時からあまり変わっていなかった。
「久しぶり!元気だった?」
「もちろん、この駅懐かしいなぁ。今日は誘ってくれてありがとう!」
友人は、数年ぶりになる地元の駅を、好奇心旺盛な小学生のように見ていた。
それを見た私は、自然と笑顔になれた。
「実はね。今日は、お願いがあって呼んだの。」
地元の思い出を巡ったり商店街に行ったり楽しいひと時を過ごした夕方。
私は思い切って、友人にお願いをしてみた。
「おぉ、どうした急に?何でも聞くよ。」
友人は、明るい笑顔でそう言ってくれた。
―――小学生の時も、こうやって色々と相談に乗ってもらったな。
友人を見ながら、どこか懐かしい気持ちになった。
私は、バックから小さな手紙を取り出して、友人に渡した。
「ここには、とある住所が書いてあるの。」
「住所?」
不思議そうな顔をした友人を前に、私は大きく頷いた。
「もしかしたら今月のどこかで、とある人から電話が掛かってくるかもしれない。もし、その人が「山本です」って名乗っていたら、この住所を伝えて欲しいの。」
「なになに?宝探しなの?」
友人は私にニヤニヤしながら尋ねてきた。
「うん、そんなものだよ!」
「分かった。とりあえず電話が掛かってきたら教えるよ。」
「了解!」
…もう、この友人とは会わないかもしれない。
きっと山本が彼女に電話を掛けることになるのは、きっと私が消えてからだ。
私は電車の改札口を見た。
「もうそろそろ、時間じゃない?」
「あ、もう電車が発車しちゃう時間!」
友人は私の手をギュッと握った。
「また会おうね!」
私は、彼女の手を握り返した。
「いつまでも、友達でいようね!」
これが、友人との最後の言葉だった。
―――山本。
私のできることは全てやった。
お願い。私の友人に電話を掛けて。あの場所へたどり着いて。
改札口を抜けて歩く友人の背中を見ながら、私はただそう願った。
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