チーレムから追放されたらギルド職員になった

うにどん

本編

「お前、お荷物なんだよ。のメンバーとして相応しくないから出て行け」

「「「アレックスの言うとおり!! 出て行って!!」」」


 ワタシの名はハナ。

 今、後から加わったくせにリーダー面している男・アレックスと彼の恋人でありワタシの幼馴染の三人娘からパーティーを出て行けと言われました。


 どうしてこうなったのかと言うと・・・・・・。

 この世界の地下には巨大な地下王国があるという伝説がある、その王国の入り口だと思わしき人の手によって作られたダンジョンが多数存在している。

 人の手によって作られたダンジョンだから侵入者を拒むトラップが存在し長らく人の出入りがなかった其処はモンスターの巣窟になっていた。

 ワタシはパーティーの中でトラップ解除、モンスターの弱体化をメインとしたサポーターとして働いていた。

 小さな村から出て冒険したいという同じ思いを抱いた小さな頃から仲が良かった幼馴染四人組だったワタシ達はそのままパーティーを組み冒険ギルドに入った、キツい時も大変な時もあったけど楽しく過ごしていた。

 ある日、リーダーを務めていた子から「女四人だけじゃ流石に大変だから男の人、一人ぐらい入れたいと思うの」と提案され、ワタシ達はその提案に賛成した。

 ある程度は魔法で何とかなるけど純粋な力作業となると流石に分が悪かったし一番の理由は女だけという理由で男だらけのパーティーに絡まれる事が多くなったからだ。

 メンバー募集から一週間後、やってきたのがアレックスだった。


 アレックスは超強力な守護の力を持った男だった。


 アレックスの守護の力はダンジョンのトラップさえも撥ね除ける程でアレックスが通るだけでトラップは無力化、さらに守護の力はそれだけじゃなくモンスターの力を弱らせる力も持っていた。

 あとアレックスは、その守護の力を使わなくても強いモンスターを一撃で倒せる実力の持ち主でもあった。

 そんなアレックスにワタシ以外の三人は夢中になりベタベタし始めチヤホヤするようになった、それに気を良くしたのか最初は謙虚な好青年だったアレックスは段々と横暴な部分が出始め、今は自分が気に入らないとすぐに暴言、暴力が出るようになった。

 ワタシはというと、アレックスの守護の力は凄いと認めていた一方で仕事を奪ったアレックスに対して余り良い感情を抱いてなかった。

 アレックスはそれを解っていたのだろう、ワタシにだけは冷たく、お荷物、無能と呼び、仲の良かった幼馴染三人もワタシに対して冷たい態度をとるようになり、そして冒頭に戻る。


 パーティーから出ていけと言われたワタシは……。


「という訳でパーティーを出ていくことにしました☆」


「ハァッ!?」


 冒険ギルドの受付に居ま~す‼️


 ぶっちゃけると幼馴染三人がアレックスにデレデレし始めたときから徐々に三人に対する感情が薄れていった。

 いや、だって、確かにアレックスは強いし頼りがいもある、それにしたってデレるの早くない? となり、アレックスが何かしたりされたりする度に誉めちぎり、ときめく三人に呆れていき、アレックスがワタシに冷たいと解ると好かれたい為かアレックスと同じような態度を取る三人に幼馴染とは? となっていき、最終的には三人に対して愛想を尽かしていた。

 アレックスに対してはもうね、追い出される前から無能、お荷物言われてたからね。


「だから丁度良かったんですよ」


「はぁ~、それならしょうがないわね。ムカつくけど‼️」


「確かにムカつきますけどね」


 ワタシの話を聞いてくれているのはギルド受付嬢のセリエさん、ワタシが新人の頃から何かと頼りにしてる人だ。

 セリエさんはワタシを労うように頭を撫でるとこれからどうするのと聞いてきた。


「えっと、ソロで活動しようかなと思って。パーティー活動は彼奴らに遭遇する確率が高いので、ソロが良いかなと、それで新たに登録をしに来ました」


「会いたくないなら、その方が良いわね。それに追放したくせに他のパーティーで活躍してるからって嫌がらせしてくる輩も居るのよ」


「そんなことあるんですか!?」


「あるよ~。最近、問題になってるの、追放したのなら放っておけばいいのに無能が活躍してるのが気に入らないとかで」


「そんなの自分勝手すぎるじゃないですか‼️」


「そうだな。あまりにも自分勝手すぎる」


 第三者の声、セリエさんの後ろに居るギルドマスターの登場に驚く。

 相変わらず渋くてダンディーな人だな。


「マ、マスター、何か用ですか?」


「なに、騒いでると思って何かあったのかと思ってな」


「実は…………」


 ワタシはマスターに全て話した。

 話を聞いたマスターは眉間にシワを寄せる、整った顔をしてる分、こういう顔をされると怖いな。


「それは災難だったな」


「はい。最初は他の仕事があるはずと思って行動してたんですけど無能は行動するなって言われて」


「君のスキルを見たがトラップ解除スキルや戦闘補助スキルの他にアイテム作成スキルや薬草栽培スキルを持っている、君がやれる事は沢山あったはずだ。彼等はそれすら知らなかったのか?」


「アイテム作成するのに使う材料や薬草の苗を買う金は無駄な出費、それに守護の力のおかげで回復要らずだからアイテムなんかいらないって言われました」


「彼等は守護の力に頼りきってるようだね」


「……はい」


 ワタシは三人に比べて戦闘系スキルを覚えにくく戦闘補助を始めとするサポート系スキルを覚えやすかった。

 だから、三人が戦闘しやすくなるよう探検しやすいようにと役に立てるようスキルを覚えたけど守護の力の前では全く役に立たないのだ。

 ワタシの努力って何だったんだろう。


「だが、これらのスキルはパーティーの為なのだろう? 君のその仲間思いの気持ちやスキルを獲た努力を水の泡にするのは勿体ない。


ギルド職員として働かないか?」


「はい??」


 ワタシ、ギルドマスターから職員とならないかって言われた?

 いや、まさか幻聴だよね。


「もう一度言おう、このギルド職員にならないか?」


 幻聴じゃない。

 ハッキリとギルドマスターの口から言われた。


「マスター! ハナちゃんを受付嬢としてですか!?」


「いや、ギルド治安維持部隊としてだ」


「それは良いですね! それならハナちゃんも活躍出来ますし、それにカレンさんならハナちゃんを大切にしてくれまね!」


 セリエさんが興奮してるけどギルドに治安維持部隊が存在してるの初耳なんですけど。


「あの~、治安維持部隊とは?」


「ギルドの掟に逆らった冒険者達の指導、捕縛、処罰をメインにダンジョンから帰ってこない冒険者の探索や新しく発見されたダンジョンの探索とかしてるの、あと私達、事務職員じゃ難しい力仕事とかもね。

 今はカレンさんっていう人がリーダーを務めていて非常に優秀で仲間思いの人だからハナちゃんもきっと好きになる筈だわ」


 セリエさんがマシンガントークで説明してくれた。

 つまり村に居た自警団のギルド版って所かな?

 でも、そんな凄いところでワタシは働けるのかな? それに彼奴らに会う事にもなりそうだし折角のお誘いだけど断った方が・・・・・・。


「へぇ~、マスター、中々良い子に声をかけたじゃない」


 今度はワタシの後ろから声が聞こえて驚くと燃える炎のような赤い髪の女性が立っていた。

 彼女は驚くワタシを見て豪快に笑った。


「アハハハ!! ごめんね、驚かせて~」


「貴女は誰ですか!?」


「さっきセリエが言ってたカレンってのがアタイさ。メンバーの一人が歳で引退しちまって、中々良い人材が居なくて困ってたのさ、最近、パーティー同士の揉め事が多くってね」


「は、はあ、そうですか。だけど、勿体ないですが・・・・・・ 「んじゃ、早速だけど寮に案内してやるよ」 わわ、ちょっと!!」


 断ろうとしたら遮られて腕を掴まれ引っ張られる、振りほどきたくても力強い!!

 ワタシはされるがままカレンさんに寮へと連れてかれた。


「ハナちゃん、連れてかれちゃいましたね」

「強引にでも連れていったという事はカレンはあの子の事を気に入ったんだろう」

「大丈夫ですかね」

「大丈夫だろう、カレンを始め治安維持部隊のメンバーは優秀だ、彼女のサポートをしっかりしてくれるだろうさ」


 こうして不可抗力ではあるがワタシはギルド職員、正確には治安維持部隊メンバーとして働くことになった。

 彼奴らこと前のパーティーとは会わないように気を遣ってくれていたけど結局、一悶着起こすことになるのだがそれは別のお話に。




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チーレムから追放されたらギルド職員になった うにどん @mhky

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