戦闘訓練Ⅱ
当日、ギルドに行きニーナさんに言われて向かった場所は冒険者ギルドの隣にある訓練場にある部屋。三十人ぐらいの若い冒険者達が夢を抱いて今ここにいる。私もその一人って思えると高揚感が収まらなかったりね。私にとっては有り得ない様な世界が今現実であり、それが私にとっての世界。
「これが私にとっての日常になるんだ。」
ボソッと呟いた言葉に、腕に抱いてるハティルは頷き頭にいるアペルは震えていた。
《我も嬉しく思います。》
《うんうん!僕達自由に動けるし、主とも話せるようになったもんね~!》
ハティルもアペルもゲーム時代の事を思い出してるんだ。ゲーム時代からも課金する程愛でていた魔物好きだった私にとっては今はとても幸せなの。
「私も、ハティルとアペルと話せて嬉しいよ。」
ハティルの頭を撫でて、頭に乗るアペルにポンポンと触れると、垂れてる尻尾を振り始め、頭の上で跳び跳ねられる。嬉しそうで何よりだけど、ちょっとお腹が痛いし頭ぐしゃぐしゃだよ。
許しちゃうんだけど。
集められた冒険者は、並んでいる椅子に座りだす。この世界にも黒板はあるんだなと思いながら来るのが遅かったからか後ろの方しかなくて、仕方無く座った。
「…見えない。」
身長低い140cmあるか無いかで、私よりも皆身長が高い。周りに子供もいるのに私低すぎない?えっと、私が一番下だと思われてたりして。これでも十八なんだよね~と笑いたくなった。前見えないし、アペルに【無限空間】からブラシを取り出してもらいハティルを膝に座らせてブラッシングを始めた。ハティルの為に買ったブラシでさらさらになっていくし気持ち良さそうな姿は可愛い。ちらちらと、何しに来てんだ…的な目線も気にしないもんね。
「今日君達の戦闘訓練の依頼を受けさせてもらうゴールドチーム王剣の一人、バシルだ。受けた以上確りと見て判断したいと思う。無理だと思う奴にはすぐ判断するのでそのつもりで宜しく頼む。」
声だけしか聞こえないけど、野太く覇気があり自信家みたい。厳しそうだし一応私も頑張らないとね。
「他にもシルバーチーム宝狼からライフと、銀月のセナさんもこの依頼を受けてくれた。」
「今日は宜しくな。」
「確りと指導したいと思います。」
ライフがいる事にちょっと嬉しく思った私。見てくれるのがライフだったらなっと思いつつ、次に発せられたセナさんは綺麗な優しそうな声だった。呼び捨てだしライフとバジルさんは仲が良いのかな?なんて思いながら武器の種類やら扱い方やらの話に眠気が襲って来る。授業中眠たくなるってこんな感じかな。教えてくれてる訳だし起きとかないと駄目だよね。でも知ってるしつまんない…一応私も知らない使い方もあるかもだし頑張ろと思いつつ必死で最後まで聞く私だったけど、何もなかった。今日のスケジュール的には、午前中は戦闘が出来るか確認で、午後から森に行っての実戦みたい。
「今から戦闘訓練をやるから訓練場に来るように。」
この部屋を出れば直ぐ訓練所であり、ここは訓練所の隅にある部屋だ。椅子から下りて行こうと歩きだした私。
「あっ…あの!」
実戦って何するんだろう?
「あの!」
考えても分からないよね。
「よし!頑張ろう!」
「あの!!」
《たぶん、主の事呼んでるよ~》
「えっ、私!?」
皆奇異の目で見て来るから私じゃないと思ってた。ごめんねと伝えながら振り返った私に呼び掛けてたのは、同じ年ぐらい(見た目がね)の少年だった。灰色っぽい長い前髪の隙間から見える翡翠色の瞳。
「あの、僕フィルマです!一緒に行っても、いいですか?」
恥ずかしそうに襟元で口を隠すフィルマ。
「私はセシリィで、この子はハティルで頭に乗ってるのがアペルです!」
腕に抱いてハティルと頭にいるアペルを紹介するなり、目を輝かせていた。
「…触る?」
「いいの!?」
「どうぞどうぞ!」
えっ!?と私を見るハティルだけど、この反応を見るなり魔物好きそうだし、魔物好きに悪い子はいない!ムスッと嫌そうなハティルとは反対に、「ふわふわ~」とはしゃぐフィルマにうんうんと同意する私。この気持ち良さ分かって欲しかったんだよね!解いたばっかりだしもっとふわふわなんだ!
《僕も僕も触る?》
ハティルの背に下りて主張するアペルに、触れるフィルマ。
「ぷにぷにしてる!冷たくて気持ち良い!」
でしょでしょ!アペルの弾力は最強なんだから!枕にして寝たらぐっすりなんだから!
「この子はどんな魔物なんですか?スライムの黒系統は珍しくいるのは知ってましたが、ウルフにしては違うし、
うッ!?鋭い!?魔物好きなら気付くのかも?まあ、まだまだだけど。
「
《主…我をあんな弱小狼と同じにするなんて…》
耳と尻尾が垂れ落ち込むハティルに内心謝る私。同じにされたくないのは分かってるんだけど、フェンリルだって知られれば面倒事が多そうじゃない?それだけは嫌だし、好きな時に好きな様に自由に生きたいの。もう病室の窓から空を眺める私じゃないしね。ハティルの背を撫でて宥める私。ハティルの格好良さは私が一番知ってるから。
「異端種!?初めて見ました!だから体色が変わってるんですね!」
うんうんと頷く私は、目を光らせ嬉しそうに見るこの子にも嘘をついて申し訳なく思ってはいたんだけど、冒険者なんだし実力を初対面で教える馬鹿はいないと思うし、罪悪感も消えちゃった。
「早く行かないと始まっちゃうよ?」
「えっと、はい!行きます!」
「フィルマ、敬語じゃくてため口でいいよ?」
「うぅ~…僕敬語が癖みたいなので、頑張りま…る。」
子供なのに敬語が癖って、大人に囲まれて来たのかな?いいのって嬉しそうなフィルマの顔か子供らしく屈託の無い笑顔で可愛かったのに、今じゃ緊張してかっちかちだよ。笑いそうになりながら、私達は皆が集まる所まで向かった。
死してゲームキャラで転生したら職業が創獣使いに進化した 終ノ夜 藍 @cuu-yr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死してゲームキャラで転生したら職業が創獣使いに進化したの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます