戦闘訓練

あれから一週間依頼をこなし、現実なんだと思い知らされていた。何と言ってもイベントが無い。漫画やアニメ、ゲームと言えばイベントがあってのものだけれど、全くもってない平和な日常。平和って言っても傷を負って帰って来る冒険者もいれば、依頼を失敗した冒険者もいる。一大事って言えばある貴族が行方を眩ましたっとかなんとか行方不明事件を聞いたけれど、それに関しては思いっきり私だからね。Fランクだから薬草採取とかだし、それをこなすのはいいんだけどね。凄く簡単になってしまった。イベントなんて言ったら悪いね。現実なんだし無いにこしたことは無いけれど…


《今日は僕のでばーん!》


そう言ってアペルがすいすいと薬草を見付けて来るのだ。ポーションになる薬草から、毒消し草や麻痺消し、採取依頼に役立つ物まで何でも見付ける天才。錬金の能力に鑑定みたいなのが付いてたみたい。草を見れば雑草か薬草が直ぐに分かるようになってて採取はアペルが、探し物ならハティルがやると難なく終わってしまう。朝に受けて昼には終わる、そんな冒険者としての日々でした。


「早いわねセシリィちゃん。」


受付嬢の中でも可愛いと人気のニーナさんが、にっこり笑って迎えてくれる。前の受付嬢とは違って凄くいい人なのだけれど、めちゃくちゃ可愛がられる。抱き付かれたり頭を撫でられて恥ずかしくて、ニーナさんのにやけ顔でもっと恥ずかしくなってくる。十八なのに十歳にしか見えないから仕方無いよね。早く成長して体!!


「今までの冒険者の中でも採取依頼でセシリィちゃんより早い人見たことないからね~!それに、違う薬草も入ってるし珍しい物だったりするし、取り方も綺麗だし依頼者が凄く感謝してたよ!」


そう言ってくれると嬉しいな。でも、取り方はこの町に来る途中にルフィに教わってそのまましてるだけだし、見付けてるの私じゃないんだよね…。


「探すのは得意なので。」


この子達が、アペルとハティルに手で付け加えながら苦笑いする私。


魔物使いテイマーの良い所って魔物が手伝ってくれる事よね!魔物の手柄だろうとそれはセシリィちゃんがいなければ手伝ってもくれないんだし、セシリィの手柄になるんだからね!」


本当、受付嬢が変わってくれて良かった。ニーナさんはいい人だよ。ありがとうございますと頭を下げて言えば、目をぱちくりさせながら「可愛い過ぎる!」何て受付越しに抱き付いて来ようとするから逃げちゃった。ニーナさん、若干力強いんだよね。

ニーナさんに依頼達成の判子を押しながら私の方へチラッと見る。私って言うよりはハティルとアペルかな?


「セシリィちゃん、月に一度戦闘訓練が行われてるんだけどやりたい?」


戦闘訓練っという言葉に、クレイブさんとの話を思い出した。


「それ受けたら討伐依頼うけれるようになるんですよね!?」


探し物と薬草採取も大事なのは分かってるんだけど、やっぱ冒険者と言えば討伐でしょ!と食い込みに聞き返しセシリィに、そうよねっと言いながら話してくれた。月始まりの日で、それが明日みたいでやるっと勢いよく言った。


「もっと早く教えてくれたらいいのに。」

「だって、セシリィちゃん可愛いし、討伐なんてやらせたくなかったんだもん。」


段々と小声になるニーナさんの声もしっかり私に聞こえてます。


「でも受付嬢とし話さないと駄目だってのも分かってたし、仕事に私情を挟んじゃいけないんだけど、それでどうしようかって悩んでたら今日になっちゃってました!」


ごめんねっとテヘッと笑って言って、ニーナさん可愛いからこんな顔で言われたら男性なんてころっと許しちゃうんだろうな。…ニーナさんやり手そう。

まぁ、話してくれたから許しちゃうんだけどね。


「うん、ちゃんと言ってね!」

「分かりました。」


十歳の見た目の子供に頭を下げる受付嬢だった。それなから戦闘訓練について教えてくれた事は、武器の扱い方と魔物との疑似戦闘だそうだ。討伐依頼を受けるなら武器を使える事が条件なのは当たり前で、後は戦えるかどうかで判断するみたい。


「武器使えるかな?」

《主、全武術オールランダーしてましたよね?》

「ゲームではね。現実では出来なかったから。」


有り余った時間をスキル習得に費やしてもいいよね。ベッド生活なんて暇だったし、武術系スキルは余り使わなかったんだけど、持ってても損はないでしょって感じで色んな武術を習得してたら全武術オールランダーになっていた。そのお陰で闘技場でやった武道大会とか魔法も勿論魔物も禁止でも、良い成績は残した。


《主なら大丈夫だよ!僕たちも昔の力も使えるみたいだし、主なら楽勝~だね!》


アペルの言葉に大きく頷くハティル。そうは言ってはくれるけど、実際やった事はないんだし不安な部分はある。ハティルやアペルがいるからと楽してたら駄目だし、寝たきりの身体じゃなく今は何でも出来るんだ。


「よし、やるか!」


身体を動かせれるんだからやらなくて後悔はしたくないもんね。パシッと頬を叩き奮い立たせて森へと向かう事にした。

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