閑話:受付嬢の話
ギルド内で困った事がある。新人とかドジな職員がいて失敗する人もいるけれど、それ以上に問題がある。
「ギルド長!どうにかして下さい!」
直談判しても、困ったように笑みを浮かべる。
「リーナさん、落ち着いて下さい。困っているのは分かるのですが、そう簡単に辞めさせる事が出来ないんですよ。注意はしているのですが…」
「ギルド長が優しいからですよ!もっとばっさりざっくり言えば良いんです!」
愛らしい顔して眉間に皺を寄せ拳を握り締める憎々しげに語る受付嬢リーナさん。まだ若いが、これでも受付嬢十年以上も働いて受付嬢の責任者でもある。
「ある方の紹介で採用したのでその方に話をしているんですがね。他の受付嬢から苛められているとかで話にならないんですよ。」
「あたし達がいつ苛めたって言うのよ!」
聞いた話をリーナさんへと話す。仲間外れにされているとか、仕事を自分だけ増やされているとか…
「ある事ないこと言いやがって。仲間外れって言うよりあんたが嫌われてるだけだし、仕事の量は皆同じで冒険者に構ってないでさっさと仕事すれば終わるんだよ。」
その愚痴は止まることなく溢れ出る。
「ミスは無いけど兎に角仕事が遅い。仕事ほっぽって受付での仕事以外の私語の多さといい、男性冒険者にすり寄って会話弾んでら定時に帰れるわけもないし。てかあんたがやらないから仕事が皆に回ってるの!女性冒険者からの苦情といい、本当に辞めて欲しい。」
「リーナさん、目がヤバイですよ。」
受付嬢としてしてはいけない人を殺しかねない目になっている。
「あら、そうですか?可愛い目ですよね?」
「…そうですね。」
受付嬢として愛らしい容姿で冒険者から人気のリーナさんですが、仕事ですから裏表あって当たり前です。中身は男前だったりするんで慕われてます。
「聞いて下さいよ!私が休みだからってあいつ調子乗ってか冒険者になりたい子を脅してたんですよ!そりゃ、
うんうんと頷きながらまだまだ続く
「話によれば言い返されてムカついてたみたいですし、その子可愛いいらしくて、あいつに言われても泣く事無く大人顔負けだったとか、見たかった。」
休みだったのが悔しげで、ソファーに深く座り背を預けた。
「あの人の仕事があたし達に回ってるんですよ。注意しても年上だからって反省のはの字もなく、仕事もせず受付でぺちゃくちゃ喋ってたら嫌われて仲間外れにされるのも分かるってもんでしょ!苛めてないだけましでしょう!本当にどうにかして下さい!」
「頑張ります。」
「新人のミスの方が本当に可愛いです。」
そう笑って言うリーナさん。後輩思いといいますか、仲間思いなんですよね。良い性格をしています。受付嬢達の心労を考えると、このギルド内で一番に解決しないといけないのがこれだった。ある人の紹介、貴族だからかそう簡単に辞めさせられなく話合いの為に何度もお伺いしていた。そんなある日の事だった。その貴族の屋敷に出入りする騎士達に目が入った。何か起きたのか、多くの騎士達が行き来して何か調べている。
「あの、何かあったんですか?」
それから聞かされた話によれば、この屋敷の当主が姿を消したらしい。屋敷から出た形跡も無く町の中も一応探しているのだそうです。
「事件性がある感じですか?」
「…それはまだお話出来ません。」
固定したようなものです。屋敷内で何か見付かったのでしょう。行方を眩ました様ですので話合いも出来なくなりましたね。これはこれで此方も助かるものです。元々良い人だとも思ってませんでしたし、何かあると思ってましたし。
「分かりました。ありがとう御座います。」
そう騎士様に一礼してギルドへと戻った。それから二日後ある貴族の号外が
「これで皆の心労も無くなるだろう。」
晴れ晴れとした心境で団長室を出た。
~
「この依頼お願いします。」
そう受付にやって来たのは小さな女の子。天使が舞い降りたかのような子で身を震わせた。こんな子見たこと無い。貴族令嬢の様なさらさらな銀色の髪に日焼けもしてないぷにっぷにな肌。愛らしい紫の瞳。何、この美少女は!?貴族令嬢と間違われても仕方がない、いやそれ以上!天使!女神!その子供と言っても良いような存在だよ!人形…生きてるわね。ウルフとは違う、魔物の子を抱き抱えたこの子を見て、あの話の子なのだと理解した。こんな子を脅すなんてありえない!最低過ぎ!
「可愛わね~」
撫でられて困惑する少女に、魔物は私を睨んでくるけれど気にしない。
「あの、前の受付嬢は?」
「あの子クビになったのよ。」
この子にも迷惑掛けちゃったみたいだし、色々教えちゃおうかな。可愛いし。
「問題の子だったし、辞めた後も大変だったみたいよ。彼氏に浮気されて捨てられたとか、家も彼氏も知り合いも無く路頭に迷ってるんじゃないかしら。」
自業自得だよね。今時仕事就くのも大変だし、受付嬢なんて女職場で周りと関わる気もなくサボってばかりな人を助けてくれる人なんていない。誰かに騙されて借金だらけで奴隷落ちするんじゃないかな。魔物の一吠えに少女が頷いた。
「天罰落ちたね。」
「天罰?」
「ううん、何でもないです。依頼お願いします!」
ペコリと頭を下げて礼儀正しい少女に、私は了解と笑って依頼を受諾した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます