第5話(里萌子はアホだった)設計って、設計って。

橋の橋脚を考えると、先ずは設計者を紹介して貰わなくてはね。

うちには設計する能力は無いよ。

ん、何で橋を造りたいかって、練習場に行くのに遠回りしてたから聞いたの、何でこんなに遠回りするのって。そしたら浅瀬で無いと馬や馬車が通れないだろうって。

・・・橋とか無いのって言ったら、この川は大水がしょっちゅう出るから、橋を架けても流されるんだよって。

そんなに大きい川でも無いけど、川幅が有るのはその水量による侵食の為か。

河岸段丘が何層にも成っているのはそう言う事か。

それで河口に近くでは護岸工事と堤の修復を急ぐんだ。

去年の大水は百年に一度の被害で、河口一帯は大変だったらしい。人も家も多く流されたと言う。



うちは、今は護岸の修復をスキルで手伝っています。

「凄い助かったよリーモ」

「明日から堤の方を頼むな」

「はい分かりました監督」

ここの工事監督はソーマさんと言って設計技師です。

工事が終わって雨季に入ったら、設計技師のお勉強をうちに教えてくれます。楽しみです・・・そう思ってましたよ、はい雨季に入るまではね。

ダメだうちの脳細胞では付いて行けない。

うちは知った、アホで有る事を。

勉強が辛すぎるってより、理解出来なくて駄目だった。プシューウゥ~。

「せっ先生!、うちは工事施工の補助が妥当だと思います」

「うん、そうかもね」

はい決まり。うちは工事施工の補助に回って、橋の設計は諦めたよ。無理だ絶対に無理だ。算術も全く頭に入ら無いし、理論もちんぷんかんぷんだ。うちはアホやったんやあー。

「今さらかい」

瓜ちゃんそりゃ無いよ。


雨季が終わり三ヶ月後に橋脚の工事を始めるらしい。設計書と見積もりを見せて貰った。

その間うちは森で魔物狩りを行ったり、色んな土木工事を手伝ってお金を儲けた。スキルで人の何倍もの早さと、労力を得られるので大変な額に成った。ごめんね工夫さんたち今回は勘弁。

さあ、橋脚の材料はうちの金を足して何とか買えた。

護岸工事に使った為、灰色の固まる土はギルドで予算が降りなかったから、うちが買ったのだ。

雨がまず降らないこの季節に手早く作業を行うらしい。気温が低く成って行くので、灰色の固まる土も丈夫に成るとか。熱が出るので暑い時期にやると脆いのだそう。


うちは瞬時に土を抜いたり、木枠を嵌め込んだり、瞬時に水を抜いたりと、普通なら相当時間が掛かるのを高速でやってのけた。中でもパイルとやらを打ち込むのが、最初の難関だったらしく喜ばれた。何せ灰色の固まる土(鉄心が入っている)の長い棒を、遠隔制御で空中浮遊させて、枠の中に打ち込むのに、土を吹き飛ばして同時に打ち込んだ箆には驚かれた。

そもそも同時に魔法は発動出来ないらしい。うちはスキルだから。

橋脚が出来たけど、橋桁や道の整備と橋を架ける地盤の整備で、また雨季に近付いてしまった。お休みの間に十五歳に成った私に、護衛長さんが成人だねって、そうなんだあ。

寒く成る前に橋が完成した。凄く嬉しくて完成パーティーではお酒を呑み過ぎたよ。


「う~ん、あれ?うちはどうして此処に」

見覚えが有る。此処は傭兵ギルドの仮眠室だ。

隣で椅子に座って寝ているのは、あの若い護衛さんだった。

うわ~、恥ずかしいとこ見られちゃったな。女の子が酔い潰れて仮眠室に運ばれたなんて、でも運んでくれたのこの人かな?、だったら嬉しい。

「パチッ・・・おっ目ぇ覚めたか、昨日は呑んだもんだな」

「ごっ御免なさい、ホプキンさんが私を運んでくれたんですから?」

「いやあ、女の護衛さんと俺とグリットって奴で運んだよ。リーモは割りと重かったからな」

( ̄▽ ̄;)「あはは」

「ひとーい。」Σ(T▽T;)


ホプキンさんとはデートもした事が無い。でも工事の時は護衛として、ライラさん、アリーナさん、そしてもう一人・・・あっ、あれがグリットさんか?。

その中で目で会話してた。でもそれをアリーナさんに察知されて冷やかされた。アリーナさんとライラさんが、ホプキンさんと会話出来る時をくれたから、今こうしてお話が出来る。有難うお二人さん。


「ありがとう看てくれて」

「どういたしまして」

軽く口づけをされた。

うわっ、うわっどうしょう。

未だデートもした事が無いのに、口づけされた、うわあ~。

真っ赤に成って黙ってる二人の仮眠室に、商業ギルド長がノックして入ってきた。

「なんだ二人とも部屋でイカガワシイ事してたか?」

「ちっ違います口づけされただけです」

「はっ、ほうほう。そこまで進展してましたか」

「あっ」私は途端に顔から火を吹いた。

彼もまた下を向いて真っ赤かだった。

「仲人ならいつでも歓迎だ、リーモも成人したから、ホプキン・・・家を斡旋して欲しいときは言えよ」

「何せリーモはこの町の財産だ。いつまでも居て欲しいからな」

そう言って懐から懐中時計を出して、私に手渡した。

「これは?」

「成人式の御祝いだ。金メッキだから安心しろ、そんなに高く無い」

「でも・・・」

「式で皆に渡す物だが、お前は工事で出れなかっただろ」

「お前にはこんなもんじゃ足りん程の恩恵を、この町は受けているんだ。貰ってもらわんとワシが困る」

「ありがとうございます」

「結婚式には呼んでくれよ」

そう言ってギルド長は出て行った。



あっと言う間だった。うちには今幼い娘と息子がいる。

5年の間に子育てと土木を主にした仕事をこなした。勿論育児を優先させて貰ったけど。

もう普通にこの世界のこの町の人間に成った。


ただ一つ違っていたのは、奥さまは魔女らしく無かったのです。

「あははスキルがチート過ぎたよ神様」

      はい、おしまい。




おい!、おらっち活躍してねえーだろ。

あっ、瓜ちゃんごめんね。

この饕餮様が活躍無しで終わるとかあり得ねーぇ~・・・・・。




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小野ノ里萌子 日前みかん @hikumamikan

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