第4話(里萌子式走行器具)健康になれる?。

最初の朝、瓜坊によって朝早く起こされた。

未だ暗かった。

「何、どうしたの、お腹減った?」

「ご主人様、魔物が来る。それも沢山来る半端無く」

「へっ、・・・ええ!」

「どっ、どうしたらいいの?」

「ワシが喰らっても良いが、ご主人様の力試しに成るかも」

「なに今回は大した相手はいないから大丈夫」

「いや力試しって言われても」

カンカンカン!。

半鐘が鳴り響いた。

カンカンカン、カンカンカン。

皆がぞろぞろ起きて来る。

「早く南門前へ集合して下さい」

「魔獣の襲来です。数が多い様です」

「戦える人は皆南門前へお願いします」

「取り敢えずうちらもいこう瓜ちゃん」

「フフフ、そう来なくてはご主人様」

皆が走ってる方向へ向かう。人が集っているわ、あそこね。

遠距離攻撃の得意な者は柵の上へ上がってくれ。他の者は柵の内から魔獣を攻撃だ。かなりの数だから気を引き締めて掛かれよ。

「良いか、魔獣から逃げて来る者を、柵に入れてから攻撃だ。遠距離攻撃は魔獣を足止めして、逃げて来る者との距離を開けろ」

おお、護衛長さんカッコいい。

「!、リーモ早速で悪いが、柵の上へ来てくれ」

「あっ、はい!」

「良いか石飛礫でも何でもいい、逃げて来る奴等から魔獣を足止めしろ」

「わかりました将軍様」

「あっ、たっ頼む」

ドッドド・・・ドッドッドッ・・・ドドドッ。

「来たぞ!、備えよ」

「門をあけーい」

「良いか逃げて来る奴等を入れたら即座に閉めろ。逃げ切れない奴に構うな。その者に躊躇すれば我らが死ぬぞ」

「ごくっ・・・」

即、死に繋がり兼ねない判断に門兵は唾を飲んだ。

どっ、どっ、どっ。

「わあー」

「ひいぃー」

「ゼイゼイ・・・」

「はあはあ・・・」

各々バラバラに駆け込んで来る。

遠くに足の遅い者達がいる。

あのままでは後ろの魔獣に追い付かれそうだ。

「くそ!、あれじゃ火炎弾も弓矢も届きゃしない」

うちの石飛礫なら届くかな?。

やってみた。

近くの石を動かすので可能だった。「「「おおお~」」」

「リーモ頼む連続で出来るか?」

「はい、出来そうです」

飛礫を魔獣に浴びせるが、大物は怯まず駆けて来る。

又一人、又一人と門を潜るも、3人ほどふらふらで、魔獣に今にも追い付かれそうだ。「くそ!、せめて弓や魔法が届けば」うちの石飛礫でも無理だ。

「地よ動け!」

「はぁ?」

護衛長が私を見たが気にせず念じる。

「地よ動いて車輪の如く回れ」

「・・・・・・!?」

大型の魔獣も小型の魔獣もずるずると後ろに下がるが、脚力にモノをいわせそれでも進んで来る奴がいる。

回転上がれ。

「・・・・・ごくっ」

護衛長が生唾を飲んだ。

大物小物がすってんころりんバタバタと後ろに消えて行ったのだ。

そしてあろうことか、ベルトコンベアーの様に回る地面の手前から、ベッタンコになった魔獣達が回る地面と止まってる地面の間から、続々と現れたのだ。

「もっもういいぞリーモ、もう回さ無くていい。」

「はあはあ・・・あれ?、魔獣は」

「潰れてるよ、見事にな」

見れば毛皮の様になった魔獣達が転がっていた。

・・・・・・・アゼン!?。



「毛皮は使えますね」

「肉も程よく柔らかく成ってましたよハハハ」

私の服を買った若い護衛さんが言った。

「半分でもいい」

アリーナさんが五色の石を沢山私の前に置いた。

今は屋外で焼き肉パーティーの準備中だ。

「まさか朝飯がバーベキューに成るとはな」

護衛長さんが私の肩をポンポンと叩いて言う。

「有難うな、皆が助かったよ」

「いえ、咄嗟に地面が回ったら良いなと思って」

ハハハ。

あはは。

凄かったわよ。

あんな魔法が有るとはな。

遠隔制御サイコーだなぁ。

楽しいバーベキューの始まりだ。


旨い、魔獣の肉がこんなに旨いなんて。

こりゃ柔らかいな、普通魔獣は固いんだが、潰れて柔らかくなるのか、これから叩いて食べるかな。


「あっ、アリーナさん」

「魔石半分でごめんね」

「いえ皆さんも戦ったし」

「まあ、死ぬ覚悟はしてたからね。戦って無いけど」

「でも毛皮は皆がリーモのもんだって言ってる」

「うちそんなに毛皮要りませんよ」

「売れば大したお金に成るよ」

「今回は皆で分けませんか、うち何か遠隔制御で稼げそうですし」

「ん~・・・接近戦や、待ち伏せとか突発的な出会せが問題ね」

「魔獣狩りはそれで死ぬ人が多いから」

「あっ、魔獣狩りだけじゃ無くて、土木とか色んな仕事が出来そうですし」

「そうね地面回せちゃうもんね、とんでも無いスキルね」

「ってか、スキル試験もう要らないかも」

「あっ、いえ・・・そのう、未だ色々確めたいです。どんな事が出来るのか?」

「何かとんでも無い事に成りそうでワクワクするわ遠隔制御」


「ゲップう~」

瓜坊は沢山のお肉に満足の様だ。



凄い・・・。

護衛の方々に呆れられた。

土・水・木々・空気まで制御出来たのだ。

こっそり治療もやってみたけど、こちらも凄かった。先の魔獣襲来の時の怪我人に、指を骨折してた人がいたけど、一瞬で骨が引っ付いた。本人は脱臼と勘違いしているらしい。

ライラさんにはばれて、骨折まで治した事にビックリしてた。


おまけに練習場の回りを柵から、強度の高い土壁にしたら、護衛長さんに化物扱いされたので、瓜坊に噛みつかれていたよ。

フフフ、護衛長さんお気をつけあそばせ、瓜坊いや饕餮はあの魔獣全てを、一瞬で喰らおうとしたのだからね。

そんな瓜ちゃんをうちはナデナデしながら馬車で帰路に着いたよ。


マーダスに戻ってその日は傭兵ギルドの宿舎で寝た。


今日は朝から傭兵ギルド長に遠隔制御のテストの報告だ。朝の空気を吸いながら窓の外を眺める。女子用宿舎の向かいに男子用宿舎が有る。例の若い護衛さんが目に入ったので手を振って見たよ。そしたら手を振り返して貰った。凄く嬉しくて気持ちがふわふわした。


そんな浮わついた気持ちで傭兵ギルドに向かったけど、やはりそう来るかみたいな、ギルド長の言葉は、うちをギルドで監視すると言うものだった。

「監禁されるんですか?」

「いやお前が悪い事をするとは思えん。どちらかと言えばその天然が問題だな」

「天然?」

「能天気なお前がホイホイと、とんでも無いスキルを乱発しないか、監視が必要なのだ」

「・・・・・確かに」

認めちまったよこいつ。

そんな顔でギルド長に見られた。

「それでなんだが、お前に仕事を頼みたい」

「何の仕事」

「護岸工事だな。実はあと三ヶ月で雨季が来る。一月半は八日十日と長雨が続く。だがな工事が少し遅れているんだ。このままだとちとまずいから、お前さんに助けて欲しい。どうだ。」

「うん、いいよ。うちもやってみたい。どれだけ出来るのか、どれだけ確実性が有るのか」

「・・・お前何を考えている」

「あっ、分かりました」

「実は橋とか建物とか、どれだけ安全な物が出来るか確めたいんです。」

「橋・・・か、水の流れは力が強い。今の土木技術でも、大きな川に橋を架けるのは難しい」

「やはり橋桁ですか」

「ああ水流の中に、土台を築く事が出来なければ無理だな。それもかなり強固なものだ」

「砂や石灰等を混ぜて固める方法は有るが、水中でしかも流れていては無理だ」

「今度の護岸工事でそれを使う予定は有りますか?」

「うむ、既に使い終わっている」

「そうですか、・・・少し余ってませんかね」

「未だ混ぜて無いのが有る事はあるが、・・・ギルドの予算でそれを買うのは出来ない」


・・・うちが買ってみるか。



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