第3話(里萌子初の遠隔制御)滑って転んでぺったんこ。
翌日里萌子は商業ギルドに何か職が無いか探しに行ってみた。
職業斡旋コーナーでソーシャルワーカーなる人に相談する。
その人はアゼナって27歳の女性だった。
「どの様なスキルをお持ちですか?」
「うちのスキルは遠隔制御って言うんやけど」
「遠隔制御ですか?、聞いた事がありませんが、意味は何と無く解りますね」
「御自分で確かめられた事はおありですか?」
「いやあ全く」
「御自身のスキルなのに」
「はあ恥ずかしながら、せやから使い方解らへんねん」
「成る程」
「こちらへ来て頂けますか」
「あっ、はい」
裏庭に連れていかれた所には井戸が有った。
「あのつるべを動かして水を汲めますか、ここからですけれど」
「えっ、それは触らずにって事ですか?」
「そうです」
「んなもん無理に決まってるじゃあーりませんか」
「いえ、遠隔制御とは言葉通りならそう言うものかと」
「はっ?、そう言う意味なんですか遠隔制御って」
・・・・・ん~、動けぇー動けぇー・・・。つるべを手で引っ張ってみる仕草をしてみた。
カラカラカラと滑車が動き、桶が上がって来た。えっと・・・桶を手に持ってっと、横のたらいにバシャッとイメージして手を動かす。したらば見事に水が入って大成功。
「こっこれは凄いですね。これサイコキネシスですね」
「サイコロ?」
「いえサイコキネシスです」
「サイコアニサキス?」
「あなたわざと間違えてません」
「さっさっサイコキネシスサイコー」
冷たい目で見られたよ、なぜかな。
「あなたを特殊能力者に認定登録したいと思いますので、ギルド長室まで御足労願います」
「へっ?」
そこから三時間うちは少し豪奢な部屋で待たされている。紅茶も三杯目で、クッキーとやらも2皿目を頂いた。・・・だって美味しいんだよクッキー。言っとくけど、うち飛鳥の人間だからね、クッキーって初めて食べたからね。お菓子は文字通り、果物か干した果物で、甘味はとっても高級な蜂蜜とかお酒の甘口、そして葛を煮込んで濾したものくらい。滅多に手に入ら無いからね。蘇なんてクッキーに比べたら太刀打ち出来ない。
此の世界には時計がある。勿論うちの飛鳥にも時計は有るけど、日時計か水時計なのよね。
なので、三時間二十分待たされた事になる。現れたのはムショいや警備署で、金貨の鑑定をしたおじさんと、三十歳くらいの体格の良いお姉さんだ。
「こんにちは」
「あっ、はじめまして」
「おじさん先程はどうも」
「また会ったな」
私は立ち上がり2人に挨拶をした。
「アゼナ私と傭兵ギルド長を呼ぶ訳を聞こうか」
「はい、このお嬢さんを特殊能力者に、認定登録したいと思いますので、御足労願いました」
「その必要性の有る能力ってどんなものなの」
「はい、ボザンナ様遠隔制御と言いまして、遠くの物を手で触れずに作業が出来ます」
「「サイコキネシス!」」
2人は顔を見合わせた。
「何処まで出来るモノなの?」
「今日は井戸の水を汲んだだけのものですが、場合によっては暗殺などに利用されかね無いので」
ああ・・・確かに。
今うち気付いたわ、ヤバイのねこの能力。
「良く今まで誰にも気付かれずにいたもんだな」
「確か13歳よねあなた」
「はい、使い方分からなかったものですから」
「君は確か金貨を神様に貰ったって言ってたよね、もしかしてその能力もかい」
「はいそうです」
「あなた正直なのね、良かったわ私達の前で」
「そうだな、君が王族や貴族と接触しなくて本当に良かった」
「知られたら拐われてたわね」
「ああ彼らの奴隷にされて王家暗殺とかに使われたかもな」
ひえぇ~、怖っ!私怖っ。
「何処まで出来るか調べる必要が有りそうね」
「そちらで保護して貰うと助かるのだが」
「ええ勿論そうするわ」
傭兵ギルドの宿舎にお世話になる顛末に。でもね、意外と美味しいのここの食堂。
翌日から複数の見張り兼護衛と共に、遠隔制御能力の検査を行なう為に移動する事になった。
「マーダスを南西に馬車で1日行くと俺等の練習場が有る」
護衛長はそう言った。
「マーダスって?」
「お前この町の名前知らんかったんか・・・」
「だってその前に捕まっちゃったもん」
「ああ、そうだなその魔法の練習場に、今から行くからな。食料やその他の物資は向こうに有る。小さな店も有るから心配は無いし、宿も綺麗だぞ」
捕まった事はスルーなの。
「だがお前汚いし臭いな」
乙女に臭いとか・・・確かにチビッてたし、クンクンうん臭いかも。
「あっ、ここ五日くらい着替えも体も拭いて無いですね」
着替え買って来てくれと、部下に言ったけど何かモゾモゾ?。
「女の子用に決まっとろうが、何を恥ずかしがっとるか!」
部下は怒られて恥ずかしい買い物を強いられた様だ。
ごめんねうち森を、さ迷うとったから。
でも女の子なのに臭いって護衛長さん酷いね。心の呟きが漏れたかな。漏らすの得意みたい。
「主よこやつ喰い殺すか?」
饕餮いや、瓜坊がとんでも無い事を小さく呟いた。
ダメ、この人達は良い人達だから駄目よ絶対。
「主がそう言うなら仕方無い」
マーダスと言う町を出て、途中の川縁で身体を洗ったよ。護衛には女の人が2人いたので、洗う間はその2人だった。ぺったんこな胸や丸く無いお尻なんぞ、見ても興奮せんが、一応女子だからな2人を付けるが、何か有ったら叫べよ。って酷いけど、否定が出来ない私なのよね。
「可愛い服、有難う御座います」
そう言って買いに行かされた若い護衛さんに頭を下げたら、顔を赤らめて大したこっちや無いからって言ってた。うちちょっと胸がときめいた。(後で知ったけど女性の下着と服を買うのは相当恥ずかしかったそうだ)
夕方に訓練場に到着した。
「何でこんな離れた所に有るんですか?」
服を買った護衛さんに尋ねた。
「ああ、魔力によっては危険なモノと、後は隠したい能力とか有ったりするから、君の場合どちらなのかな?」
「もしかすると両方かも知れません。未だ威力は解ら無いので」
「ヘエ~?、威力が解らないって不思議だね」
「魔力量云々より使い方次第と言われました」
そんな会話を遮られ、女性の護衛と共に宿へ連れて行かれた。
あの若い護衛さんともっと話したかったな。何か顔が温く成って来た。
「ここが宿よ、衛兵専用ね。私アリーナよろしく」
「あっ、うち里萌子宜しくお願いします」
「私はライラよろしくね。でもってあちらの宿が一般客用よ」
「よっ宜しくお願いいたします」
「何かぎこち無いわね。敬語止めようよ。リーモ」
ライラさんは言った。
「リーモ?」
「里萌子だからリーモ」
「うん、それ良いわねリーモ」
私もそれにするとアリーナさんも言う。
かくしてうちはリーモと言われる様に成るのだった。
良かった~、亀甲縛りの女じゃ無くて。
晩飯まで少し有るから、能力ちょっと見せてくれないか。護衛長さんが言って来た。
少し離れた柵の中にアリーナ・ライラさんと護衛長さんとで入ったよ。後の人は荷物を宿の部屋に直してた。(直す=此処では片付ける事。里萌子は関西人)
あの的にそこら辺の石ころを当ててくれないか。
護衛長さんに言われたので、やってみる。うーん、うーん・・・ふわりと小石が浮く。
「飛んでけぇー」プッ。
両手を前に突き出し力を込めて叫ぶ。(プッって・・・)
バンッ!。
「「「おおお!」」」
「もっと大きい石出来るリーモ」
ライラさんが言ったのでやってみる。
・・・臭いな。
うちは瓜坊護衛長を軽く噛んだってと頭の中で唱えた。
ふわりと岩が浮く。
「ちょっ!、待ち」
「それは止めよう」
アリーナさんがもっと小さいのを指差した。
ドーン!!。
地面に岩を落として、最初より倍位の小石を浮かせる。
「エイ!」バアーン。
「良かったわね今度は(おなら)出なくて」
思わずライラさんを白い目で見てしまった。
「「「何だ!!どうした」」」護衛数人が駆け込んで来た。
「大丈夫ちょっと岩を動かしただけよ。スキルの試験中だからね」
側では護衛長が、こら!、離せこの瓜坊。離せっちゅうに。瓜坊と格闘中だった。
「里萌子この瓜坊何とかしろ」
「乙女に臭いとか言った罰よ」
「いや、悪かった。悪かったから瓜坊何とかして」
「瓜ちゃーん離してあげて」
プピッ、瓜坊はうちの方に駆けて来た。
「助かった、里萌子のペットだから、斬るわけにもいかんし」
それを聞いた瓜坊が饕餮の目でギラリと護衛長を睨んだ。
・・・止めてあげてね瓜坊。
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