第2話(里萌子捕まる)その縛りは止めて。

ざわざわ、ざわざわ。

別にカ○ジでは無い。

この世界では未だ十歳にも見える女の子が、手枷首枷で市中を連行されているのだ。野次烏合の声が飛び交うのは無理も無い。


何であんな幼い子が、一体何をしたんだ。

どんな悪い事したらああなるんだ。

金貨を盗んだらしいぞ、いやいや密造したとか、んな訳あるかー。

いやしかしなあ、憲兵さんも冗談ではやらんだろう。

商業ギルド長が呼ばれたらしいぞ、金貨が本物か確認するらしい。

なんか特別な金貨らしいぞ、何だそれは、王室御用達の大金貨とか何とか。

そんな声がそこかしこから聞こえて来る。


何でこう成った。

アイテム袋見せてみろって言われて、「アイテム袋!!」って大声で唱えてドン引きされ、出したんだけど・・・。

ドサッ、ガシャ、ジャラジャラ。

アイテム袋って両手上げて唱えたからか知らないけど、金貨の袋が空中のアイテム袋から落ちて、床に・・・まあ、そこまでは良かったんよね。

そこまでは・・・。


「王室御用達の大金貨だとぉー」

「こんなもの何処で手に入れた」

「ああそれは神様が・・・」

私馬鹿正直に言っちゃたんだよね。神様に貰ったって。

「そんなわけ有るかぁー」

って盗人認定されて後ろ手に縛られて、市中引き回しにされてますのよ、はい。

でもね、何故、ナゼ、なぜなの。

なぜ亀甲縛りなのおぉ~。

あっ、うちが亀甲縛り知ってるのは突っ込まんといてね。



んでね。

この町の警備署に護送されましたとさ。

おしまい。

めでたし、めでたし。


じゃないわー!。


ちっともめでたくあらへんわー。

何ですか、王室御用達の大金貨って、神様何ですかそれ。

えっ、百枚なら屋敷一軒買えるって・・・、そうじゃ無い。そんな一般流通しない金貨をなぜくれたの。うちねそれで屋台で何か食べようって思ってた。まあそこでどうせアウトやね。ほんま。

「普通の金貨にせえやあぁー!!」


「御免なさい、すいませんでした」

「本当にこの通り許してください」

今、町のメイン広場の石舞台みたいな所で、うちの前で公式謝罪してるのは、警備署長と憲兵隊長さんで、うん・・・そうね、商業ギルド長が証明してくれたの。

ギルドにねちゃんと出納簿登録されてたの、うちのお金が・・・王室より入金有りと。

神様あ~商業ギルドの登録カード有るなら言ってよ、それで町の門も身分証代わりに通れたのに。

亀甲縛りで市中引き回しにされたんだからね、13歳の乙女だよ本当にもう。


王室に真珠のネックレス納品した事に成ってるらしい。(現在日本円にして数億の価値がこの世界では有る)

神様あ、説明不足だよ本当に。

商業ギルド長に一般流通貨幣に換金して貰った。一部は銀の小粒にしてくれた。田舎では貨幣よりその方が使い勝手が良いそうだ。


かくしてうちは、この町の有名人に成りました。

亀甲縛りの女として。

そっちかーい!。


今は宿の飯屋で二日ぶりに食事してるよ。良く死ななかったね。

旨いな、飛鳥のご飯より美味しいかも。

宿の部屋で考えた、これからどうやって糧を得ようかと。

うちに何がでけるやろ?。

「プピッ」

「んっ、なあに?。」

部屋で宿の残り飯を食べてる、瓜坊が何か言いたそうだ。けど言葉はわかんないよねえ。

「我が名はトゥテッツ」

「ん?」

「我が主に申す、神より遠隔制御の法を授かっておるはず」

「んっ、誰?」

「ぷぴ、主よ召喚獣を忘れたか」

「えっ!、もしかしてあなた瓜坊なの、瓜坊が喋ってるの?」

「その通り、我が名はトゥテッツ古よりの神獣である。そして人と会話も出来る。瓜坊は仮の姿である。本当は凄~く恐ろしい姿・・・!、やっ止めい」

里萌子は知らなかった。

饕餮なる神獣の恐ろしさを。

瓜坊の姿の饕餮が可愛い過ぎて、こちょこちょ、撫で撫で。

古よりの最強の妖獣神獣も形無しである。

「えへへ、亀甲縛りにしてやる」

「アッ、ご主人様それは止めて」

そうして里萌子と最強の瓜坊の夜は更けていった。

瓜坊は里萌子に抱かれて幸せそうに眠るのであった。


いや饕餮って牛の体で禍々しい角が有って、人面だったりとってもとても、それは恐ろしき妖獣だからね。

魔物を喰らう悪食のね。



「う~ん遠隔制御ってどうやって使うの、ムニャムニャ」



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