⑧救難要請

 気づいたらシィヤピィェンの姿はなくなっており、クトゥルーと思しきおぞましい気配も消えていた。

 その様子を眺めて、信介は危険がないことを確認する。


 アマチュア無線を拾おうとした。

 しかし、あまりの熱さに思わず手を放す。

 光を放った際にショートしていたのだろう。もはや無線機として機能しないだろう。


 二人の手を引いて洞穴の中から抜け出る。

 すでに夕方といっていい時間だった。

 山の夕方は短い。もはや、残されている時間は少なかった。


 信介はコンパスと地図を取り出し、位置を確かめようとする。

 しかし、コンパスは壊れているのか役に立たない。コンパスはポケットに入れて地図と太陽の方角だけでどうにか位置を確認する。


 レイク教授は埋め込まれた卵によって、目が見えず、耳も聞こえづらい状態になっている。さらに、呪われた言葉を吐き、時に信介の意図に反する行動をとる

 それをどうにかなだめて、目的地へと連れていく。


 エラリィは幼くなったものの信介のいうことをよく聞いてくれた。しかし、レイク教授の無軌道な態度におびえ、時としてそのために行く手を止める。

 二人の間を取り持ちつつ、信介は荒れた藪道を切り開いていく。


 シィヤピィェンはエラリィやレイク教授の言葉を借り、あるいはテレパシーを使い、「信介は友達」と語りかけてきた。あれはどういう意味なのか?

 ストレートに友好を訴えてきたのだろうか。そうだとしても、とても受け入れられるものではないのだが。


 やがて太陽が沈む。

 ヘッドランプをつけて、どうにか道を探す。

 道など元々ないのだ。暗がりの中にわずかな明かりだけが頼りとあって、苦労は倍増する。


 シィヤピィェンの出現もクトゥルーの干渉も、もはやなくなっていた。

 その理由がなんなのか、信介は時折考えるのだが、はっきりした答えは出ない。

 ただ、シィヤピィェンのテレパシーはクトゥルーにも届いていたのではないだろうか。クトゥルーはシィヤピィェンの記憶を利用して苦しめていたように思える。

 結局、シィヤピィェンはその責苦に耐えられず逃げたのだろう。

 では、クトゥルーはなぜ消え去ったのか……。


 ようやく高台に着いた。

 信介は自分のスマホを見るが圏外のままだった。

 レイク教授のスマホは電波が通っていた。これを利用して110番に電話する。これは119番でもいいらしい。

 窓口になった警察官に状況を伝え救助のヘリを読んでもらうように頼んだ。


 救助が来るまでレイク教授もエラリィも信介の手を煩わせたが、どうにか救助ヘリが着くまで待つことができた。

 調査隊の3人は生還した。さまざまな問題をさて置けば、そういえるだろう。


 そして、数日が過ぎていった。

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