⑦決断

 なんだかんだと言いつつ、信介の意志は彼らに協力すべきだと感じつつあった。

 ミスカトニック大学の二人が胡散臭いことに変わりはないが、それが薄らいでくると自分の感情がより露わになる。

 もともと未知の場所に行くのが好きなのである。どれだけ信憑性があるかはわからないが、未確認生物の探索に付き合ってみるのも面白そうだ。

 とはいえ、一抹の不安もあった。シィヤピィェンのテレパシーを信じる気持ちになっていることだ。彼らの催眠術か何かで洗脳されているのではないだろうか、とも思う。


 なんにせよ、しっかりと情報収集する必要がある。


 レイク教授からいくつか情報を聞き出し、目的地が九頭龍山であることがわかった。

「そんな山あったな」

 信介ですら抱いた感想はそんなものであった。

 登山コースとして人気の山があり、林業の盛んな山があり、その奥にある、ろくに整備もされていない山だ。

 外から眺めても特に印象の残らない山容。頂上に至る山道もなく、かといって挑戦者を呼び込むほどの魅力を持たない。そんな意識から外れてしまうような山だった。


 とはいえ、目的地がわかれば装備もわかる。ルートの想定もできる。

 問題は二人の登山レベルではあるが、フィールドワークで山域の調査はしているらしく、話を聞く限りでは問題なさそうだった。

 それに、現地に行ってみてどうしようもなければ、その時点で帰ればいいだけだ。


「最後に、一つ気になったんですが、千葉がいにしえのものの前哨基地だって言いましたよね。いったい何のための基地だったんですか?」


「それは戦争ですよ。南極に拠点を持っていた古のものは、太平洋を拠点にしていたクトゥルーと戦争していたんです」


「はあ」


 信介はレイク教授のこの言葉の意味するところを理解しないまま、もっと言えば理解する気が一切ないままに部屋を出た。

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