⑥テレパシー
「テレパシーだって?」
信介は怒気を含んだ声を出す。
「そうです。シィヤピィェンにはテレパシーを扱えるのです。
実際に体験したのではないですか?」
不条理なものを感じるが、そこは同意せざるを得ない。あれはトリックや洗脳ではない。はっきりとした自覚のあるものだった。
だが、怪しげな魔術が横行するとされるミスカトニック大学の教授だ。一筋縄でいかないことを忘れるべきでない。
信介は自分自身に警戒を忘れないよう肝に銘じる。
「それで、そのシィヤピ……なんたらの居場所はどうして特定したんですか?」
口調が敬語に戻っていた。シィヤピィェンの肉塊に動揺したのが収まり、落ち着きつつあった。
信介は決して礼儀を知らないものではない。正確に言えば、礼儀を少しだけわきまえているものだ。
「モンタルバーノ・イオーニコと千葉は似ているんですよ。
それと言うのも、どちらも
地磁気の逆転を記録した地層として同時期の情報を残したというのも偶然じゃないんでしょう」
「似ているから、いるんじゃないかってことですか? そんな短絡的な理由じゃないんでしょうね」
いつまでも話し続けるレイク教授に口を挟み、結論を出すように促す。
「シィヤピィェンの目撃情報は僅かですが古代からあるんです。
そこで、ミスカトニック図書館で学生たちに調べさせました。
そして目撃情報が起きるのは200~300年ほどの周期で千葉で発生しているのです。
そして、今がその目撃の出る周期に該当するんですよ」
レイク教授は心底楽しそうに話す。
しかし、信介は呆れていた。
「100年もラグがありそうな情報で見つけようってんですか? 無理でしょ」
「それはテレパシーを利用できると思うんデス」
エラリィが口を出した。そして、テーブルに置かれたシィヤピィェンの肉塊を掲げる。
「このお肉のテレパシーに同族のシィヤピィェンは反応するはずです。このお肉は仲間を求めているようデスから」
確かに自分の見たテレパシーでも仲間と交信する様子を感じることができた。近くまで行けば何か反応はあるのかもしれない。
そして、エラリィの日本語はカトコトのような訛りはあるが、意外に日本語を知らないわけでないことに気づきつつあった。
「失敗や空振りを恐れていたら、何の調査もできないのデスよ。なんにしても一度案内してもらえマセンカ」
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