③南極の狂える山脈
「レイク教授のひいおじいさんは、ヒストリーの上で初めてのころの南極探検隊だったんデス」
エラリィ女史が話し始めた
エラリィの顔は彫が深く、白人の特徴がよく出たものだった。ただ、肌の色は少し浅黒い。これは彼女の家系にインド人がいる影響だった。その遺伝かはわからないが彼女は計算が早く、分析力が高い。
レイク教授とエラリィ女史が二人で千葉に調査に訪れたのは人手がなかったからではない。二人の能力が高いため、ほかに必要な人材は現地のガイドだけだったからだ。
「ただ、ひいおじいさんは帰ってきませんデシタ。その代ワリに帰ってきたダイアーという教授のレポートがレイク教授の人生を決めたのデス」
そのダイアー教授が語ったところによると、探検隊は奇妙な山脈を発見し、その洞窟から人類とはまったく違う進化を遂げた知的生命体の痕跡を見つけたという。しかし、残されていたのは痕跡だけに限らず、恐ろしい怪物も存在していた。
ダイアー教授は命からがら逃げだしたものの、レイク教授のひいおじいさんを始めとする探検隊のことごとくが殺されてしまったのだ。
生き延びたダイアー教授は南極での成果を報告した。その多くはレイク教授のひいおじいさんのレポートによるものだった。
だが、世間はその報告を信用せず闇に抹消した。その後の調査で彼らの発見したはずの山脈が跡形もなかったことが最大の原因だった。
「それがレイク教授には悔しいのでしョウネ」
信介はその話を興味なさげに聞いていた。あくびをしながら口に出す。
「で、それが今回の話にどう関わってくるの?」
エラリィ女史はその反応に少しやりにくいものを感じつつも続ける。
「そうデスネ、その知的生命体のことは
情報を解析すると、古のものは地球の全土に及ぶ広大な文明を築いていた。彼らの生息域はおもに海中が占められる。
古のものは自らの使役する多くの生命を生み出した。南極でダイアー教授らを襲ったという怪物――
そして、環太平洋地域のかつて海洋だった場所に、ショゴス以前に打ち捨てられた生物が眠っている可能性があるのだという。
「ネッ、面白そうな話だと思いませンカ!」
エラリィは話しているうちに興奮しだし、身を乗り出し目をキラキラと輝かせながら信介に問いかけた。
その姿に思わず引いた信介は疑問を口に出す。
「それが千葉? 環太平洋地域なんて言っても広いでしょ。どうして千葉だってわかるんですか」
「その質問には私が答えよう」
いつの間にか泣き止んだレイク教授が二人の近くまで来ていた。さっきまでとは打って変わってニコニコと笑っている。
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