第5話 モウイチド

7月31日 午前8時42分


そういえば、マネージャーの横山瑞希や、カメラマン、監督はどうなったのだろう。

横山に電話をかけてみよう。

プルルルル プルルルル プルルルル

ツー

「あれ?切れた?」

電話が繋がらない。

くそっ。食料も水もない。

時計の音だけが、カチカチと時を刻んでいる。


「なぁ、湧希。俺たちどーなるんだろ。このまま死ぬのかな?」

「それはごめんだな。まだ彼女いねーからな。」

「そんなこと言ってる場合かよ。」

緊迫な状況の中だが、少しだけほがらかな時間が流れた。


「もう1回、探索に行くか。」

「俺もついて行くよ。健太だけでは頼りないしな。」

「幸隆も、小柄な体つきだろ?大丈夫か?」

「そう言われても、健太よりは運動神経がいいよ。」

「じゃあ、みんなはここで待っていてね。」

確かに、狭い場所には頼りがいがあるな。

そろそろ、1時間が経つな。


7月31日 午前9時3分


健太と幸隆は、1階を探し回った。

「武器とかねーのかな?」

「ちょうどいいな、床に鉄パイプ落ちてるぞ。」

「ほんとだな。」

そういえば、創一を殺したのは誰なのだろう。

「なぁ、幸隆。創一は誰に殺されたと思う?」

「そうだな。人がいるとも思えないしな。幽霊とか?」

「そうだとしたら、どうすればいいのか。」

鉄パイプをもっていた健太の手に、冷たい汗がにじみ出る。

今更だが創一を殺された怒りが嵐のように襲ってくる。


7月31日 午前9時7分


健太と幸隆は、湧希、雪子、恵の元へ戻った。

「1回全員で大広間に行かないか?」

健太が、提案した。一応鉄パイプも持っている。


全員が賛成したので、健太たちは大広間へ向かった。


「みんな俺についてこいよ」

言葉では言えたが、内心かなり不安だった。

膝がガクガク震えている。

「どうした健太。膝が震えてんぞ。もしかして怖いの?」

「うるさいぞ湧希。そんなことないよ。」

「あっそ。」


7月31日 午前9時12分


ゴーゴーと、風が荒れ狂っている。

ガサガサっ

「…!」

誰か、なにかしたのか?

全員の顔を見るが、全員がキョトンとしている。

「1回この部屋を探索してみようよ。」

と、雪子が言い出す。

「いいよ。」


「なぁ、幸隆。なんか見つかったか?」

「……。」

「無視すんなよ。」

「…!!」

幸隆が、金魚のように口をパクパクさせている。

「大丈夫か幸隆!」

「アイツに…殺ら…れた。」

「そうか。もう喋らなくていい。」

そのセリフを言い終えるころには、幸隆は息をしていなかった。


「みんな!幸隆が…」

健太は、血走った目で湧希、雪子、恵に話しかけた。

怒りで手が震える。

「どうしたの?健太」

「殺されてしまった…」

「あ…」

全員の顔が、歪む。


「出てこい!」

すると、後ろから声がする。

そこにはなんと、鎌を持った死神のような姿の亡霊がいた。

「キタカ…コロス」

「っ!」


「キャー」

悲鳴が聞こえた瞬間、健太の顔が歪んだ。

血だらけの恵、雪子、湧希が横たわっていた。

目の輝きを失っている。


健太は、怒りで震えた。

「くそっ!くらえー!」

健太は、持っていた鉄パイプを亡霊に向けながら走っていった。

だが亡霊のため、すり抜けてしまった。

「なにっ!」


そう思った瞬間、腹部に強い衝撃が走った。

生暖かく、赤い液体がべっとりとついている。

健太は、倒れた。

「ゴホッ。ここまでか。」

視界が真っ暗になった。


7月31日 午前7時55分


健太は、目を覚ました。

目の前の光景に、驚きを隠せなかった。

なんと、健太以外の5人が楽しく喋っていた。

なぜみんないるんだ…?

「俺はなんで生きているんだ?」

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オワリノハジマリ 川原 晃多 @Kawagoi

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