第4話 館のボウレイ

7月31日 午前8時2分


健太に続き、湧希、幸隆、雪子、恵も中に入った……

館の中からも雨の音が響き渡ってくる。

華奢な体つきの幸隆が、口を開いた。

「怖いね…」

幸隆の言う通りだ。

恵が首を縦に振る。

「確かに。」

と、雪子も呟く。

「ところで、創一はどこへ行ったんだ?」

健太の質問に、全員の体が固まる。

「さっきから声も聞こえないよね?」

「もしかしたら、遠くまで行っちゃった?」

「みんなで探しに行こうよ。」

雪子と、恵が話し合っていた。

「それじゃ、俺達も探しに行くか。」


7月31日 午前8時5分


健太は、幸隆と湧希と行動していた。

この館は、二階建てらしい。しかし、とても広い。

「1回外に出てみるか。」

湧希の話に納得して、健太たちは外へ出ようとした。


ガチャ……ガチャ……

「あれ?」

「どうしたんだ?湧希」

「開かない…」

「でも、誰も鍵かってないよな?」

「あぁ。」

閉じ込められてるのか?

額に汗が帯のように広がる。


7月31日 午前8時12分


「キャーー」

恵の叫び声が聞こえた。

健太は恵を探し、そこに駆けつけた。

その場所は、2階の大広間だった。


不気味な肖像画が並べられている。

よく見てみると、同じ顔ばかりだ。


「どうしたんだ!」

「創一さんが…」

「えっ…」

健太は、顔を歪めた。血の匂いが漂っている。胃酸が逆流したきたが何とか抑えた。

どうして…

そこには、血だらけの創一が横になっていた。

「もう息をしていない…」

目の輝きをなくしている。

「どうしよう…。」

「どうしようって。こんなこと…あっていいのかよ。」

と、幸隆が目を赤くして泣いている。

健太たちは、1階の玄関へ戻った。


「そういえば、この扉があかないんだよ。」

湧希が口を開く。

「なんで?」

「それが分からないんだよ!」

「まぁ、とりあえず落ち着け。俺が、鍵を探してくるよ。」

「いいの?」

「あぁ、みんなはここで待っていてくれ。」


7月31日 午前8時38分


健太は館中を歩き回っていた。

そこで、肖像画に目を取られた。


ガサッ

後ろから何かを振り下ろそうとする音が聞こえた。

「なんだっ!?」

健太はギリギリのところで避けることが出来た。

急いで1階に戻ろう。


健太は体中にびっしりと汗をかいていた。

「どうしたんだ。健太。すごい汗だぞ?」

「2階の大広間で、何者かに…殺されそうになった…」

「え?じゃぁ、創一も」

「あぁ、多分アイツに殺されたんだと思う。」


どうやったらこの館から出ていけるのだろう。

早く出なければ、餓死するか、殺されるか。

これからどうしていけばいいのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る