第3話 ハジマリ

7月30日 午前9時45分


やっと、病室に通された。

とても長く感じた。


「よろしくお願いします。私医院長の神原聡と申します。」

「お願いします。ちょっと体調が悪くて、、」

「口開けてください。……別に赤くはないですね。」

「そうですか。いきなりなんですが、霊が出るという館をご存知でしょうか?」

「あぁ、かつては私のおじいさんの家でした。しかし、亡くなってから誰も引き取らなかったので今は廃墟ですよ。」

やっぱり、関係があったのか…

「ありがとうございました。」


7月30日 午後23時58分


もうすぐ寝るか。



朝、目が覚めると、もう11時だった。

ロケは9時からのはず…

「遅刻じゃん…」

急がないと、怒られてしまう。

すぐに準備し、車に乗った。外には人がとても少ない。何故だろうか。今日は空が暗く曇っている。どこかいつもと違う雰囲気が漂っている。

館について、健太は顔にロウを塗られたように固まった。誰もいない。

なぜか扉だけが空いている。

「入ってみよう…」

健太は館に吸い込まれるように、その館に入っていった。



「はっ!!」

健太は、目を覚ました。

目覚めてもなおぞっとする気持ちが皮膚にはりついていた。額の汗を拭った。

妙な胸騒ぎがする。

「嫌な夢だな。水でも飲むか。」

少しでも、気持ちを紛らわしたい。

スマートフォンへと、手を伸ばした。

すると、横山瑞希からメールが入っていた。

「あしたは、8時からロケが始まります。」

そういえば、時間聞いていなかったな。

「了解」

眠い…

健太は、ベッドに再び横になった。ずっしりとマブタが重くなる。


7月31日 午前6時50分


あの館までは、1時間はかかる。

顔を洗い、食事をし、車に乗った。

今日は、あいにくの雨だった。


7月31日 午前7時55分


もう少しでロケが始まる。

風が強く、まるで館に誘われているようだ。

健太以外にも、俳優の片岡創一や、西島幸隆、宮野湧希。女優に、野島雪子、鈴木恵。

健太以外の5人は、楽しく話している。

健太たち6人は、先に館へはいろうとした。

健太の頭に、昨日の夢が再生された。

「夢と似ているな…」

ボソッと呟いた。

がっちりとした体つきの湧希がそれに反応した。

「夢って?」

健太は全員に昨日の夢のことを説明した。

お調子者の創一が、言った。

「じゃー、俺が先にはーいろ。そんな霊なんか出るわけないし笑」

「やめときなよ。」

注意したが、先に行ってしまった。

妙な胸騒ぎがする。

足を館に踏み入れると、古臭い匂いが充満していた。

健太に続き、湧希、幸隆、雪子、恵も中に入った……

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