第37話 おしまい

予想していたから、恐怖は無かった。

被爆後、20年以内に大抵

変化が現れると聞いていたから。



でも、こんなに早く。



まだ、戦の途中なのに。






通信システムを傍受していると、


どういう訳か気分が軽くなってきた。



その時、未来の彼から通信が入ってきた。


「良く聞いてほしい。僕らの目的は達成されたようだ。




わたしは、彼の言葉に耳を疑った。




「どういう事?」





彼は、冷静に「ケミカルと、それとレーザーの”治療”効果があったらしい。危険な核分裂炉の採用を各国が中止しはじめた。あの時代の20年後あたりから」





彼は、尚も続ける。



「これで、本当にお別れだ。.....一度、会いたかった。」



彼の意外な言葉に、わたしは言葉を失った。

落涙した。



「ありがとう」それだけは、言葉にして伝えたかった。


フェルディナンド、愛してるわ。




その言葉だけは、言わない方がいいと思った。



たぶん、私はこのまま死んでゆくのに

彼にそんな言葉を告げて、重荷になりたくない。








もし、生まれ変わったら。



今度は、フェルディナンドの時代に生まれたい。


そう思った。





体は、さらに軽く感じられるような気がした。




気づくと、ほとんど

わたしは、「ここ」に存在していなかった。




研究室の彼、フェルディナンドの祖先の彼が

急にいなくなったわたしの行方を探していた。



コンピューター・トモグラフィで。




でも、たぶん。




これで、天国に行けるのね(笑)。





天国にいちばん近い島で、お昼寝しよ(笑)。








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それから。




わたしは、気づくと


元々、生まれたあの家に、もう一度生まれた。




ふつう、生まれ変わりと言うと、過去生の記憶は

忘れてる、筈なのだけど




わたしは、なぜか覚えていて。



18歳になると、自動車の運転免許を取って


なぜか、1977年式のフォルクスワーゲン、ベージュの

それを買った。



街角のお店にあった、その車が

なぜか、気になって。






なんとなく。





そして、日曜日。



はじめてのドライブ、なんだか、わくわく。



楽しい事があるといいな。




あ、そうそう。



こんど、大学にドイツから留学生が来るんだ。


イケメンだといーな。







--fine

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