掌編推理小説・『脱出』
夢美瑠瑠
掌編推理小説・『脱出』
(2月26日、「脱出の日」に因んで今日アメブロに投稿したものです)
掌編推理小説・『脱出』
私は「O」<オー>と呼ばれています。
生物の生存や環境には非常に重要な私ですが、生物ではありません。
王?欧?
いいえ、KINGやEUROPEのことではありません。
それにZEROでもO嬢でもありません。
「O」は頭文字ですけど、これは…そうですね。英語です。
英語の略称なのです。
でも万国共通語でもあります。
私は自然の中に瀰漫していて…特に山深い場所の渓谷などに多い。
私を吸い込んで、「あー空気がおいしい」などというのはたいてい都会の人ですね。
私自身はいなくても、直接には生物の生命の維持に関係はない。
関係ないんです。
むしろ本来は毒なんです。
あー兄弟分のことですね。
兄弟分も同じ頭文字なんですが、こっちはいないと生き物が生きていけないほどに重要な役割の存在です。
でも、「フリーラジカル」というものにこの兄弟分は変貌することがあって、そうなると発がん性の物質になるのです…
「おおい、天井穴が開いたぞー“脱出”だ!」
「”脱出”してやる!」
「われわれを防波堤みたいにしやがって!もう敵の「UV」の矢面に立つのは嫌だ」
「さあ、広い宇宙へ旅立とう!」
こういう会話を交わすわけではないですが、私たちがこうやって大気圏から「脱出」することが最近大きな問題になっています。
人間には有害なUV,紫外線を遮蔽しているのが私たちなのです。
その私たちが次々と「脱出」すると紫外線が増える。
そうすると、皮膚がんが増える。
そのことが、大問題になっているのです。
そうして、この天井穴、風穴を開けるのは冷蔵庫やクーラーから出る排気物質なのです。
そう、知ってますよね。フロンガスです。
私たちの兄弟は、兄弟とは言わずに、学術用語ではアイソトープと呼ばれます…
もう分かった?
そう、私は「オゾン」です。O3と書きますね。
同位体、アイソトープはオキシダント、つまり酸素です。
フロンガスで出来るオゾンホールから「脱出していく」オゾンが、地上に届く紫外線を増やすということは知っていますよね?
最初のところで分かったあなたは天才かも!
最後まで分からなかったあなたは相当勘が鈍いかもですね…😊
<了>
掌編推理小説・『脱出』 夢美瑠瑠 @joeyasushi
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